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中島臨太朗と兼近大樹の創世記②
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たくさんの話をした。
兼近の執筆中の話、出版社さんとの打ち合わせの時にいたクセのある社員さんの話、取材の話、個人チャンネルの話、くだらない話―――
まぁ、一方的に兼近が話してたほうが多いんだけど、久々に楽しそうに話す兼近の顔を見れただけで嬉しかった。
VOCEの手作り味噌で作ったラーメンも、
「ちゃんと手洗いました?」
「洗ったよ、ちゃんと指輪も外しましたぁぁ」
というお約束付きではあったけど、うまくできた。
「うめぇぇぇーーーっ!!!何これ!?」
「うまいっしょ」
「味噌めちゃくちゃ
「ウマー。えっ、これ本当にりんたろーさんが作ったの?」
「そうよ」
「うそだーっ!!」
「なんでわざわざ嘘つくんだよ」
「あれでしょ、買ってきた味噌になんか色々やって手作り風にしたんでしょ」
「だったら最初から味噌ラーメン買ってくるわ」
「…だな。アハハハーッ!!」
そんな掛け合いしながらもうまそうに食べる兼近が愛しい。
「アレ、くれないの?」
「アレって?」
「美味しいもの食ったときに言うアレ」
「あー、安売りはしないんで」
「えー、残念」
「でも、せっかくりんたろーさんが作ってくれたから特別ですよ」
「お、やったー!」
「うまぴょーーーーいっ!!!」
後片付けを済ませたあとは偶然ネタ番組がテレビでやっていたので笑いながらも二人でディスカッション。
俺達は他の仕事があったから参加できなかったんだよなー。
「やっぱおもろいなー」
「このネタのオチが絶妙」
「でも、もう少しテンポは速いほうがおもろいと思いません?」
「うん、それ俺も思った」
「って、準々決勝止まりの俺らが何言ってんのって感じだけどっ!!」
「アハハハ。でもやっぱ1歩ずつでもいいから先に進みたいよな」
「うんっ!!…でもそのためには寄せなきゃいけないんすかね」
「おまえがそれで楽しいならそれはおまえの発注として受け取るけど?」
兼近はしばらくだまってしまった。
本当は兼近の心の中は決まってるんだと思う、ネタを書く俺に気を使ってるのだろう。
「発注がないと工場は作動しないよ?」
「・・・・・・」
兼近の長い睫毛が影を落としたまま。
発注かけても工場が無理と言えばそれまでだが、でも発注自体がなければ工場の電源だって入りはしない。
俺にもずっとネタを書き続けてきた意地がある、兼近の発注にはなるべく応えたいし、何より兼近の発注には“ミス”がない。
体育座りのまま、ゆらゆら揺れてる兼近の頭に軽く触れ、発注作業を促した。
「あのさ…
EXIT色はなくしたくない、でも寄せるじゃなくて審査員を巻き込むようなネタが欲しい」
兼近の真剣な眼差しに俺の頭の中の工場ラインが動き出した。
「発注受け付けました!」
「マジっ!?」
「俺の生産ラインとかねちの発注が同じもの求めてたから。大量生産は無理だけど俺もいい“商品”作りたいし」
「そしたらいい案があるんですけど―――」
普通の商品なら商品開発→発注が主流なんだろうけど、俺らのネタは兼近の発注から始まり、商品開発するような感じ。
他の芸人さん達はどうなのか詳しくは知らないけど、俺らはこのスタイルが合っている。
結局、ここから発注・受注・商品開発の繰り返しは風呂場まで持ち込まれ、30代半ばとやっと30になった髪がピンクのオッサン2人がフルチンで真剣にネタの話をする姿は…
(相変わらずムードねぇなぁ…でも俺ららしいな)
部屋に差し込む月の光はいつかの光と同じように見えた。
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