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第七章
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悠叶の目が覚めて、医者や看護婦、悠叶の両親と次々に悠叶は囲まれ、涙を流して悠叶を抱き締めていた母親を見た時、迅鵺はやっと肩の力が抜けた。
「悠叶さん、今日はご家族と一緒に居てあげて下さい。俺は明日来ますから。」
迅鵺は、悠叶にそう言い残してお店へと向かった。
お店に着いた迅鵺は、真っ先に響弥の元へ行くと悠叶が目を覚ました事を報告し、明日話をしに行くと伝える。
「迅鵺、分かってると思うが油断はするなよ。念のため俺も着いて行くが、病室の前で待ってるから安心して話をしろ。」
響弥も悠叶が自殺をしたと聞いて、響弥なりに思う事があったのだろう。以前程の迫力はないようだった。
そして翌日、迅鵺と響弥は悠叶の病室まで来ると、響弥は中には入らずドアの横の壁に凭れて、ドアの前に居る迅鵺の方を向く。
「何かあったら、ここに居るから知らせろ。」
響弥の言葉に相槌を打って、迅鵺は悠叶が居る病室へと入る。
病室に入ると、既に悠叶はベッドの上で上体を起こして待っていたようだ。
悠叶の表情は、やっぱり気が弱そうなおっとりとした表情で、少し気まずいのか情けなく眉を下げて控えめな笑顔を見せた。
「────迅鵺さん・・・謝って済む問題じゃないって分かってます・・でも、本当にすみませんでしたっ・・」
目をギュッと固く瞑って言う悠叶に、迅鵺は近付くと悠叶の鼻を強く摘まんだ。
「い"っ!痛いですっ・・迅鵺ひゃんっ!」
悠叶の情けない声が聞けた所で鼻を解放してあげると、迅鵺はベッドの傍にある椅子に腰掛ける。
そして、真剣な眼差しを悠叶に向けると本題へ入った。
「悠叶さんには色々聞きたい事があるっていうか、正直何から聞けばいいのかも分かんないんすけど・・とりあえず、俺の事が好きなんすよね?」
迅鵺からの言葉に悠叶は予測していなかったようで、目を真ん丸に見開いて驚いている様子だ。
けれど、悠叶は真面目な表情になると遠慮がちに頷いた。
「────なら、なんで俺を殺そうとしたんすか?」
これは予測していたようだった。
だけど、悠叶の視線は戸惑って迅鵺から離れていく。
「────そ、それは・・独りになるのが、怖かったんです・・・」
迅鵺の反応に恐れているように、弱々しい声色で言う悠叶の顔は、どんどん下を向いていく。
そんな悠叶の顔を、迅鵺は両手で挟むようにして頬に手を当てると自分の方へ、ぐりんと向かせた。
「悠叶さん──・・知ってること全部、俺に聞かせてくれませんか?」
迅鵺の凛とした声色で、真っ直ぐに届くように悠叶の顔をしっかりと目を反らず見詰めた。
迅鵺に見詰められて悠叶はたじろぎ、少し頬を赤らめるけれど、最初から話すつもりだったのか長い睫毛を伏せて“分かりました”と、ぽつりと呟いた。
迅鵺は、悠叶の頬から手を離し話を聞く体勢に入る。この時、迅鵺は苦しいくらいに緊張していた。
迅鵺を襲った、あの男の事が頭に浮かんだからだ。
“もしかしたら、これで全てが分かるかもしれない”
迅鵺の心の中に、期待と恐怖が対立している。
そんな息苦しさを覚えながらも話は進んでいって、悠叶の口から出てくる話は、迅鵺にとって驚きの連続だった。
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