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第十章
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「それ、なんですか?」
一頻り泣いて落ち着いた悠叶は、パンパンに腫らした顔で迅鵺の手元を覗き込む。
「代表に、お年玉貰ったんです。」
代表に貰ったお年玉を開くと、中には一万円札と一枚の紙が入っていて、迅鵺は筆で書かれた文字を読み上げる。
「天辺は、まだまだ先!下を向くな、常に上を向いていけ!!」
ずっと、NO.1を張ってきた迅鵺へ代表からの言葉。
「ここで、満足すんなってことっすね。」
迅鵺は、ハハッと笑って言うと、悠叶も一緒になって笑ってくれる。
「やっぱり迅鵺さんは凄いですね。代表さんに、こんなカッコいいこと言って貰えるなんて。今年も迅鵺さんを応援しに行きますからね。」
悠叶のあどけない言葉に迅鵺はムッとすると、悠叶の鼻を摘まんだ。
「何言ってんすかっ!悠叶さんに、もうお金使わせらんないですよっ。」
“いひゃいっ!”なんて情けない声を上げるも、悠叶は反論する。
「えぇ~~~っ!でも俺、お店の迅鵺さんにも会いたいですっ!」
「────やっぱり悠叶さんは、なんだかんだ言って俺の言うこと訊かないっすよね・・・」
迅鵺は、駄々を捏ねる悠叶に諦めたように溜め息を吐くと、妥協した提案をする。
「じゃあ、こういうのはどうっすか?お金は、交互に払うってことで。」
「それって俺が払ったら次お店に行った時、迅鵺さんが払うってことですか?」
迅鵺は頷くと“それならフェアでしょ?”と言う。
悠叶は、そんな迅鵺を心から愛しく思って“そうですね”と言った。
「それより悠叶さん、初詣行きましょう。」
迅鵺の唐突な誘いに、悠叶は時計に視線を滑らせると始発はもう出ている時間で、胸を踊らせた。
「はいっ!誰かと初詣に行くの初めてです。」
悠叶の言葉に、迅鵺は優しく微笑んだ。
「正式に付き合えた日に初詣なんて、悠叶さんツイてますね。これで一生俺から離れらんないっすよ?」
迅鵺は悪戯っぽく言うと“それはプロポーズですか?”と言う悠叶の言葉に、迅鵺は自分が言った事がどういう意味なのか気付かされて、頬を赤らめると、照れ隠しをするようにブー垂れた顔をする。
「い、いちいち揚げ足とらないで下さいよっ」
「迅鵺さん、可愛いです。」
「可愛いって言うなっ!」
そんなやり取りをしながら準備をすると、二人は最寄り駅を目指してアパートを出た。
「────さ、さむい"・・」
悠叶は寒さに弱いようで、デカイ図体をこれでもかと縮こませると、ぶるりと身震いさせる。
そんな悠叶が可笑しくて、迅鵺はクスッと笑った。
「悠叶さん、そんなデカイ癖に寒いの駄目なんすね。」
迅鵺は寒さには割と強くて、逆に暑さには弱いと話す。
そんな他愛もないお互いの事を話しながら、有名な神社を目的地に電車に乗り込んだ。
こんな普通な光景が迅鵺にとっても新鮮で、男同士だという事に悩んでいた事が不思議に思えてくるくらい、悠叶の隣に居る事が心地好かった。
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