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序章
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春の雨は、嫌な思い出もあの日の悪口も、ぜんぶ、洗い流してくれる。
暗褐色の髪を雨に濡らし、うつむくように歩く少年。
白神高校一年の星宮りんねは、雑踏を掻き分けつつ校門をくぐろうとした。
「りんね、傘忘れたの?」
高校生にしては幼めの声。
振り返ると、同級生の佐野晶が傘を差し出し、上目遣いでりんねを見つめていた。
「ん。忘れちったー」
顔を上げたりんねは、屈託のない笑顔で応えた。
「素直だな……。これ使って、風邪ひいちゃうよ」
「へへっ、サンキュな」
二つの傘と雨の壁に囲まれた、ふたりだけの空間。
それはりんねにとって、晶にとって、この上なく心地よいものだった。
これから先も、きっと。
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