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俺たちの始まりは【華南】11
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修二はなんて答えた?
修二は俺のことなんて…?
待て待て…、俺たちが付き合い始めた頃、修二は百目鬼さんを怖がってた、道端で吐いちまう程拒絶反応が出てたのに、そんな相手に本音を言うか?
…いや、だから言わされたってこともあり得るか…、あの時の百目鬼さんは暴走してて強引だったから…
百目鬼「…なんて顔してんだ」
あッ…やべッ、もろ顔に出た。
百目鬼「昔は別れろって脅しても食ってかかってきてたのになぁ、今更自分が好かれてるか不安で自信ないのか」
華南「ち、ちげーよ、修二が俺を好きなのは知ってるし、好かれてる自信がないわけじゃない!」
百目鬼「じゃ、なぜビビる?」
華南「ビビってない!」
百目鬼「聞きたいんだろ?修二がなんて言ったか」
華南「…、百目鬼さんには悪いけど、あの頃の修二が本音を教えるとは思えない、修二は、むつや俺からあんたを遠ざけようと必死だった。だから、俺やむつの情報を口にするとは思えない」
怒られるかと思ったが、百目鬼さんは俺の言葉を聞いて、睨むようだった表情が少しだけ緩まった。
百目鬼「……お前は、むつと違ってよく見えてる。だが、むつと違って抑えが効く分、修二に嘘をつかせ逃げる隙を与える」
華南「!?」
百目鬼「クソチビは空気はよまねぇし、人の気持ちより自分の衝動優先だ。だが、的外れなくせに根本は見えてる。むつは修二に嘘をつかせないし逃がさない」
ッ…
まさか…
百目鬼さんに言われるとは思わなかった…
俺の感じてる違和感にズバッと切込むような意見を…
それに…
心なしかさっきっから…
百目鬼さんはむつの事ムスっとしながら言う癖に、なんだか評価が高い?
普段あんな啀み合ってんのに…
百目鬼「修二のこと、泣かせてみたいんだろ」
華南「は?俺はそんなこと…」
百目鬼「お前はさっき、〝修二を泣かせたら取り返しがつかない〟と言った。つまり、泣かせたいと思ったことがあるんだろう」
華南「俺は…」
百目鬼「俺なんかに言われたくないだろうが、その気持ちは分かる。修二は、加虐心を煽るタイプだ。健気で献身的でいつも穏やか。お前は苛めたいわけじゃないだろうが、泣かせたり狼狽えたりして欲しいと思ったことくらいあるんじゃないか?」
…。
複雑な言葉だ…。
百目鬼さんは〝そういう〟つもりじゃないと言ってるのに、分かってるのに、百目鬼さんと同じになるのかと一瞬感じた自分がいる。
今の百目鬼さんは、昔の百目鬼さんじゃないし。修二が酷い目に遭わされた現場を俺は見たわけじゃない、俺が知ってるのは、修二が百目鬼さんに復縁を迫られて体を触られて噛みつかれた事だけ…
修二を無茶苦茶にして泣かせようとして壊した百目鬼さんを、俺は知らないのに、あれは過去の話で、修二と百目鬼さんは今は和解したし、今だって俺の相談に乗ってくれてんのに。
一瞬、同じにすんな、と思っちまった…
情けねぇ…
華南「…」
百目鬼「…お前は、むつとは正反対なんだな。我慢を知ってる。だが、お前が我慢すれば、修二も我慢する」
華南「え?」
百目鬼「いろんな意味でな」
その意味が何を指してるのか分かって複雑さが増す。
修二は、性の全てを百目鬼に仕込まれた。
つまりはそういう意味だ。
頭に血がのぼるんだか、体が冷えるんだかいっぺんに起こって…
ハッとした。
百目鬼の隣で、マキが静かに話を聞いている。
何も見てないような静かな瞳で…
マキの前でこんな話よくねぇだろ…
…でも、マキは百目鬼さんを呼んだらどうなるか分かってたはずだ、分かってて呼んで相談に乗るようにした。…とすると…マキの目的はなんだ??
マキにとって、百目鬼さんと修二の話を聞くのはいい気分じゃないはずだ、しかも、百目鬼さんが修二の事をよく知ってるみたいなこんな話は、辛いはず…
マキが、こうなるのを予想できなかったとは考え辛い…
じゃあ何で??
百目鬼さんも、マキに配慮がないわけじゃなさそうなのに…。
その証拠に、今俺がチラッとマキを見たのを見て、百目鬼さんソファーに深々背を預け、隣でテーブルに頬杖ついてるマキの背中をチラッと見た。
百目鬼「…まぁ、そういう事だ。修二に我慢させたくないならお前が我慢しなきゃいい。素直にさせたいならお前が素直になれ、ただし…」
百目鬼さんが改まって俺を見た。その表情は厳しい。
だけど、俺にだけ言ってる感じじゃなくて、言い聞かせてる感じだ…
自分自身に??
華南「…ただし?」
百目鬼「無理させたくないなら、見極めるんだな」
華南「…我慢はするな、だけど無理はさせるなって事?」
百目鬼「そうだ」
華南「…凄く難しい事言ってますよ」
俺が困ったように肩をすくめると、百目鬼さんは静かに、そして重みのある声で言った。
百目鬼「俺は〝そうしてる〟」
あっ、今、百目鬼さん視線だけマキを見て言った…。
だから、〝そうしてた〟じゃなくて、〝そうしてる〟なのか。
修二とマキが似てるから?
百目鬼「俺が言えるのはそれ位だ。悪いがマキは連れて帰る」
百目鬼さんはパッと切り変えたように立ち上がり、マキを抱え上げた。
マキはいきなり抱き上げられたから、驚いてホワイトラインを落としてしまい、子供みたいに
マキ「あっ、僕のホワイトラインさぁーん」
とか言って、百目鬼さんが舌打ちしながらもホワイトラインをキッチリ拾い上げてマキに抱っこさせてた。
マジで、マキに甘々…
マキ「もお帰っちゃうの?華南の話まだ終わってなくない?」
百目鬼「うるさい、あとはこいつが自分でどうにかすればいい、時間がもったいない」
マキ「えー、散々お世話してもらってそんな言い方なくない?そんなに仕事忙しいなら僕の迎えなんか来なきゃよかったのに、1人で帰れるよ」
百目鬼「ぁア¨?〝俺〟と〝お前〟の時間が減るんだよ。だいたいいくら世話んなったってお前の頼みじゃなきゃ相談なんか乗らねぇーぞ。俺はてめーの事で手一杯だ、俺なんか役にたちゃしねぇよ、人様に口出しするアドバイスも暇もない」
マキ「ッ!?」
その時、マキの澄ました表情が崩れて赤くなった。
百目鬼さんはけしてマキの何かを見抜いたんじゃないだろう、そのままブツブツ文句を続けた。
だけど、マキが何か考えてたものの答えをあげたのかもしれない。マキが百目鬼さんに見えないように俯いて噛みしめるように百目鬼さんにすり寄った。
〝あのマキ様〟が、子供みたいに表情を露わにしてる。
一体マキは、何をしようとしてたんだ?
……俺が、逆の立場なら?
マキが俺に百目鬼の事を聞いてきて、俺より修二の方が詳しいだろうから修二に話を聞く…
修二は百目鬼の恋愛がうまくいって欲しいから相談に乗ってくれて…、百目鬼との昔話を俺の前でしたら、俺もわかっちゃいるけどいい気はしない…
…
『お前の頼みじゃなきゃ…』
あっ、…もしかして…
修二の為に百目鬼さんが俺の相談に乗ったって思ってたのに、マキの頼みだからだって言われたからか?
…つまり、マキはまだ、百目鬼さんが修二の為に何かするって、気持ちが残ってるんじゃって思ってんのか?
そうなのか?マキ。
そんなに愛おしそうに抱きつくくせに、まだ、百目鬼さんの気持ちに自信ないのか?
…それは、無駄な心配だと思うけどな…
だって、マキは俯いてるから見てないけど、百目鬼さんがお前を見る表情は、もう可愛くて可愛くて1人にするのは心配で心配で、閉じ込めておきたいけど閉じ込めて壊したくないって、溺愛以外の何者でもない表情してっし、俺にはベタベタすんなってスゲー睨んできてますよ。
百目鬼さんみたいに露骨で情熱的でも、不安になるもんなのかな…
百目鬼「オイ」
華南「え、あ、はい!」
百目鬼「修二は、お前の事『タイプ』だって言ってたぞ」
…
華南「…、えっ??」
百目鬼「むつよりも、お前の方がタイプだって言ってたぞ。あとは修二に直接聞け。マキは連れて帰る、正月明けまで暇はないから自分でなんとかしろ。マキは貸さない」
華南「えっ…、むつより?…ぇえ?」
百目鬼「…それから、マキに顔近づけんな」
華南「!?」
獰猛な猛獣さんは、まだ帰らないって言うマキを抱き抱えて俺に思いっきり威嚇して、ファミレスを出て行きました。
ハハッ…顔は怖いけど中身は子供みてぇー…
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