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迷子 5
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うなだれる様に頭を抱えると、ニヤニヤと悪巧みをした後の子供の様な顔で波留を見てくる猇に向かって怒る
「猇っ‼︎子供の前でなにやってるのさっ‼︎」
だが、彼は悪びれもなく波留を無視して李織に教えた
「よく聞けよ?俺と波留は、お前の言う通りラブラブだ。」
「変な事教えないっ‼︎」
まるでコントを繰り広げてる様な波留と猇の会話に、それまで控えめに笑っていた李織がお腹を抱えて笑いだした
「あはははっ‼︎…波留ちゃんも虎のお兄ちゃんも面白い‼︎」
そんな彼女に驚き、思わず2人で顔を見合わせてしまう
「………」
(李織ちゃんが、笑ってくれたから許してあげよ…)
大きなため息をついて、肩の力を抜くと遠くから誰かが呼ぶ声が聞こえた
「李織ー?…李織ー、何処なのー?」
次第に人混みの中から一人の女性が現れ、辺りをくまなく見回している
「お母さんだ‼︎」
李織は顔をあげてその女性を見ると、そこへ一目散にかけて行く
「お母さん‼︎」
「李織‼︎ 何処に行ってたの‼︎」
女性が彼女の母親だと解り、自分達も遅れて後を追う
「李織ちゃん、お母さん見つかったんだね?」
母親の腕の中で嬉しそうに微笑む李織に向かって言うと、彼女は日向の様に明るい笑顔を見せてくれた
「どうもご迷惑おかけしました。」
母親は波留と猇に何度も頭を下げて礼をする
その瞳には安心からなのか、うっすらと涙が浮かびあがっていた
「いえいえっ‼︎李織ちゃんのお母さんが見つかって良かったです‼︎」
波留は母親に頭をあげる様言い笑顔を向ける
そんな波留を他所に、李織は母親の足元から離れ、猇の前に来ると彼の服の裾をクイッと引いた
「…ん?どうした?」
猇はそんな李織から何かを察したのか、優しく微笑んでしゃがみ込んで彼女と同じ目線になる
すると李織は猇の両頬を小さな手で挟むと、弧を描いた唇にちゅっとキスをした
「っっ‼︎」 「…李織っ⁉︎」
思わぬ行動に波留と彼女の母親は目を丸くして驚く
「李織も虎のお兄ちゃんの事、好きになっちゃった♡ ……李織が大きくなったら結婚してくれる?」
真っ赤な顔で猇に言う彼女に母親は頭を下げてまた謝ってきた
(子供の冗談…一種の吊り橋効果だ…きっとこれは…)
目尻から涙が出そうなのを必死に堪え、母親とのやり取りをまた繰り返す
「お前が大きくなっても俺の事が好きだったらな。」
横目で波留を見ながら悪そうに微笑みながら、彼女の頭を乱暴に撫でる
「うんっ‼︎ 彼女の波留ちゃんより可愛い女の子になるから‼︎」
「…はぇっ?…かの…じょ?」
「おう、そうしろ。」
猇の言葉に大きく頷くと、李織は母親の手をとって行ってしまう
母親は何度も後ろを振り返りながら波留に謝り、頭を下げる
「………子供も悪くねぇな。」
小さくなる2人を見つめながら猇がそう言ったが、波留の耳には届かなかった
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