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お似合い
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俺がトイレに行っている間に、俺の席には見知らぬ男が座っていた。
体格は、俺と変わらないくらいだろうか、俺とは違い程よく筋肉がついていそうな理想的な体型に、優しげな微笑を浮かべた美形と呼ぶのがふさわしい整った顔。
アキラの知り合いなのだろうか、親しげに顔を寄せて話をしている様子を見たくなくて、席にも戻れなくて、またトイレに引き返した。
手洗い場の鏡に映った自分の顔を見たくなかった。さっき見たあの人と比べてしまう。整ってもいない顔、貧相な体、アキラには釣り合わない自分。
「お似合いだったな」
思わずこぼれた独り言に、自分自身が深く傷ついていた。
しばらくぼんやりトイレに佇んでいると、メールが届いた。
『だいじょうぶか?』
焦ったのか全部平仮名だ。アキラを心配させるのは嫌で、トイレを出ていく。
「ごめん、ちょっと気分悪くって」
席に戻ると、もう誰もいなかった。ますます店内は混雑して、言い訳ではなく、本当に気分が悪くなりそうだった。
「酔った?次の店に移ろうかって思ってたけど、帰るか」
その言葉に慌てる。
「人に酔っただけだから、店出たら大丈夫。それより、せっかくだからもう一軒行ってみたい」
「まあ、次の店は静かだとは思うけど・・・ホントに大丈夫か?」
アキラの気遣いは嬉しかったけど、それよりもアキラの行きつけてるであろう、他の店にも行ってみたいという欲求のほうが強かった。
「次に、しんどくなったら絶対帰るから・・・だから、ダメかな?」
俺なんかが上目遣いをしたところで、何の効果もないだろう。だけど、おねだりなんてしたことないし、さっきの嫌な気分のままで家に帰るなんて絶対に避けたいと、俺なりに必死でお願いをする。
アキラは、仕方ないなって様子でもう一軒連れていってくれることになった。
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