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飲み干す
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待ち合わせ場所には、すでに橋本さんの姿があった。カウンターに座り、入ってきた俺ににこやかに笑いながら軽く手をあげてくれる。
一つ席を空けて橋本さんの隣に座った。これは先生からの言いつけだった。
橋本さんの前に置かれた灰皿には、吸い殻が溜まっている。かなり前から来ていたのだろうか。
橋本さんがカウンターの向こうに軽く手を上げると、見たことのないバーテンがビールを持ってきた。
今日はママが休みなのか、姿が見えなかった。
「そろそろ来る頃だと思って、注文しておいたよ」
橋本さんの前にも新しいビールが置かれ、軽くグラスを持ち上げられたので、つられるように自分もビールのグラスを持ってしまった。
しまったな。先生が来るまでは何も注文しないつもりだったのに。
ここまでしてしまえば、飲まないわけにはいかない。
持ち上げたグラスをそのまま下ろすこともできず、迷いながらも口を付けた。
一口、ちびりと飲むつもりが、ゴクンと音がするほど飲んでしまう。
「ビール一杯くらいじゃ酔わないだろ?酔うのが嫌ならあとで水でも飲めばいい」
ここで頑なに断って警戒心を丸出しにしてしまえば、まとまる話もまとまらなくなるかもしれない。
そんな思いと、確かにビール一杯じゃ酔わないよなという油断が、俺の喉ごしを良くしたようだった。
あっという間にビールを飲み干してしまう。
「どうする?もう一杯頼もうか?」
さすがにそれはまずいだろう。
そう判断する頭は十分に働いて、チェイサーとして水を頼んだ。
グラスに入った水をグイッと飲み干した、そのすぐあとに、急に誰かに引きずられるような感覚に襲われる。
えっ?、と思った時には、体が思うように動かせず、椅子から滑り落ちそうになるほど体が傾いていた。
「おっと、大丈夫かい?」
大げさなアクションで俺を支える橋本さんに、大丈夫だと伝えようとして、声が出せないことに気がつく。
これはおかしい、何か変だ。とようやく気づいたときには、もう目蓋すら開けていられなくなり、消えていく意識の中で、橋本さんのゾッとするほど明るい声が耳に入ってきていた。
「君が悪いんだよ、君が。悪い子にはお仕置きしなきゃね」
俺が完全に意識を失う前に、頭に浮かんだのは、アキラの顔だけだった────。
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