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モヤモヤとイライラ
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「──で、こうなるわけだが…
おい、窓側の一番後ろの席誰だ。隣の奴起こせ」
「えぇ……またですか…。
あ、あの~…起きてます…? というか、起きてくださ~い……」
「……うるさい、起きてる…」
ようやくこれから浅い眠りに入ろうかというところで無理やり起こされた。
眠りを邪魔され途端に不機嫌になる。
仕方なく机に張り付いた頭を持ち上げると怯えた表情で俺をのぞき込む隣の奴と目が合った。
…多分、睨んでたんだと思う。俺が。
だってすげービビってんだもん、そいつ。茶髪でピアスを何個も開けてて、俺よりも全然不良っぽいのに…。
名前は確か、南 燈士(ミナミ トウジ)。
まあ、席が隣なだけで基本的に関わりはないんだけど。
「そ、そうですよね起きてますよね!
失礼しましたっ!!」
「な、なんだ、お前か…。眠いなら保健室行けよ。な?」
「………ふぁ……はい……」
とは言ったものの、保健室まで行く気力がない。そのためだけに使う体力が最早もったいない。
午前の授業が終わり、昼休みが過ぎ、今は6限目。つまり午後最後の授業だ。
朝から眠くて、一限目からずっとこんな感じの繰り返しだった。当然、授業の内容など少しも頭に入ってこなかった。
昨日はあのまま別れた。
俺はあいつの出した問いに答えられなくてお互いに見つめ合ったまま、どれだけの時間が過ぎたかはわからない。
しばらくして、あいつが先に口を開いた。
「……今日はもう帰ろうか」
じゃあ、と俺がなにか言う前に手を振っていなくなった。
引き止めることも、なにか言うわけでもなく、ただその背中を黙って見届けた。
──正確には、なにも言えなかった。
その後、いつ、どの道を通って帰ったのか覚えていない。
真っ白な頭の中で、あいつに言われた言葉だけがこだましていた。
『君は僕のこと、どう思ってるの…?』
そう問われた時のあいつがやけに気になった。自分の真意がわからなくなった。
モヤモヤ、ズキズキ、グルグル──
昨日からずっとそれが続いている。
そのせいですこぶる寝つきが悪かった。目を閉じてもあいつのことばかり頭に浮かんで、脳裏に焼きついて離れない。
一晩中悩まされ、気付けば朝になっていた。
おかげで眠くて眠くて仕方がない。
だからあいつに会ったら開口一番、文句を言ってやろうと思っていた。なのに、準備をして、いつもの時間に家を出たら玄関前にあいつの姿はなかった。
最初はどこかに隠れていて、驚かすつもりなのかと思い辺りをきょろきょろと見回してみたが、それらしき人影はどこにも見当たらなかった。
その時点で違和感はあった。
あいつが俺の家に来るようになってから今まで、家を出発する時間にいないことはなかったから。
昨日の出来事もあって、先に学校に行ってるだけかもしれないと思った。でも、いつまで経ってもあいつが俺の前に姿を現すことはなかった。
…なんでだよ
俺がなにかしたって言うのか?
いくら考えたところで答えが出る筈もなく、モヤモヤを引きずったまま、久々に一人で気分の悪い一日を過ごした。
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