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いつから?
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「帆奏。帆奏ってば、ねぇ……
聞いてる?」
「あー…うん。なに?」
「なに、じゃないでしょ。さっきからずっと呼んでるのに…もう」
「ごめん、なんだっけ」
「聞いてくれてたんじゃなかったの?」
「ああ、思い出した思い出した。
お麩の話だったよね、こないだ行った喫茶店の」
「全然違うよ!汐音くんのことだよっ!」
「………ごめん」
今度はちゃんと聞いとこう…
どうやらまた、春野はあたしがいない間に汐音となにかあったみたいだ。
なんでこうもタイミングが悪いのかね。
「汐音くん今日すっごい機嫌悪くて、怖い人……菅野くんの名前を出したら机蹴飛ばしちゃったんだよ」
「……………」
「そしたら汐音くんの机に入ってた手紙が出てきちゃって、それを棄てといてとか言うし、授業サボるとか言い出すし、怒鳴られたし…
なんか八つ当たりされた感じなんだけど…」
「……………」
「なのにね? 他の子は私のこと羨ましいって言うんだよ、おかしくない?
寿命が縮まりそうなくらい怖かった私の心中察してよ!」
「……………」
「うぅ……ぐすっ…。ほのかぁ…」
…お気の毒に、としか言い様がないわ
てか、春野、多分それ地雷踏んでるよ
なんて、余計なことは言わないけど
「…おつかれー」
「なにそれ!」
ひどい!と怒られた。
あたしから言わせれば、勝手に愚痴られて挙げ句怒られてる今の方がよっぽど理不尽だと思うけどね。
「というか、今日は一日本当になにしてたの? 休憩時間になったらすぐどっか行っちゃって。
今朝も来るの遅かったよね?」
「んー…ちょっと野暮用、かな。
さ、もう帰ろ。教室誰もいないじゃん」
「半分以上、帆奏のせいだからね!?」
自分のと春野の荷物を持つと、怒りながらも置いてかれまいと追ってくる春野を横目にさっさと教室を出て行く。
「──あ…そうだ」
不意に思い出したように扉の前で立ち止まった。
「なに? 帆奏」
「汐音ってさ…いつから同じクラスだったっけ?」
「いつから、って学年上がってからでしょ? 帆奏も汐音くんと同じクラスだーって喜んでたじゃない。
どうしたの、突然?」
「…だよねー。
あたしもそう思う」
「?」
一度んー、と伸びをして今度は荷物を受け取った春野と並んで歩き出した。
春野はさっきの質問にさほど疑問を抱くことはなく、別の話題を持ち出して喋り始めた。それを隣で「うん」とか「へー」といった適当な相槌で聞き流していた。
心のどこかで少し、春野には申し訳ないな、と思いつつも今朝のことが頭から離れなかった。
汐音のお気に入りの菅野って人。
気になったから、とりあえず名前からってことで早々に登校して、先生には適当に口実をつくって職員室で名簿を物色した。
事はすんなりと進み目的はすぐに果たせたのだけれど、その時、ふと自分のクラスの出席簿が目にとまった。なんでかわからなかったけど、始業式の日まで遡ってパラパラと見返してみた。
その時は「あたしってよっぽど暇人なんだな…」くらいにしか思ってなかった。それがあるページに差し掛かった時に手が止まった。
「……なんで手書き…?」
日付は始業式の日
クラス名簿の一番下に汐音の名前はあった。
パソコン入力ではなく、一人だけ手書きの文字で。
しかし、他のどのページを見ても手書きだったのはその一ページだけでもしかしたら打ち忘れてただけかも、とは思った。うっかり、なんてことは誰にだってあることだ。
一年の時から汐音のことは噂でよく聞いてたし、存在の認識もあった。
でも、なにが、とかはよくわからなかったけどなぜかそう簡単に納得することができなかった。
「…得体が知れないねぇ……」
「え? なんて?」
「んーん。なんでもない」
春野には…黙っとくか
特に話さないといけない理由もないし
そっと胸に仕舞い込み、なにを理由にあの二人に近付こうかと企てた。
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