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秘密【終】
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「ンっ……!」
あ、ヤバい。
こいつのこういう声、結構クる、かもしれない。
何回かのついばむようなキスの後、追撃と言わんばかりに舌を入れたら驚いたのか面白いくらい肩が揺れた。
呼吸するヒマもないくらい舌を絡めて吸いつく度ぴくぴく動くのも新鮮で、
鼻に抜ける声が漏れるのにどうしようもなく興奮する。
いけるトコまでいっちゃうか、
なあんて思って篠のアゴに手をかけたら「やっ、ぁ…ふぁ…っ、なっちゃん…!」とかなんとかバカがバランス崩して必然的にその上になだれ込むと、
ガッチン!
………嫌ってくらい歯と歯を打った。
「イっ……てぇ…!」
あまりの痛みに口を押さえてうずくまる。
俺の前歯取れたんじゃねえの、いや大丈夫ついてる、良かった、ああああクソ超ジンジンする超いってえ、そんでもって超ダセえ!
見れば篠も相当ダメージを食らったらしく、俺と同じようなカッコでうずくまってた。
「篠…へいき?」
「わかんないすっごい痛か…った。
ねえ俺前歯折れてない? 感覚ないんだけど」
「こっち向いて『にー』ってしてみ」
「…にー」
「大丈夫」
「よ、よかった」
そう言って顔をほころばせ雰囲気もへったくれもない会話にとどめの一発、
「なんか初キスっぽかったね」と篠はわざわざご丁寧に地雷を踏んだ。
そうだけど。そうじゃないだろ!
もっとこう…なんかあるだろその前に!
「なんで俺がお前にキスしたとか、考えたりしないわけ?」
怒りのようなものがフツフツと湧いてくる。
相変わらずぐしゃぐしゃの顔で目を丸くした篠が『火っにあーぶらー(油)えいっ』みたいな感じで「えっ?」とか聞き返すから、
勢い余ってそれは爆発。
「『えっ?』てなんだよ『えっ?』て。
『え』じゃねんだよ頭回転させろバカ」
おかしい。俺ってこんなに短気だったっけかな。
「お前がずっとそんなんだから俺が、俺だけぐるぐるひとりで空回るんだよ気づけよバカ篠!
俺だってお前のことが好きだって、そんくらいのこといい加減に察しろよ!!」
つうか言わすなよこんなこと。
自分の耳にも届かなかった小さな声は、果たしてこいつに届いただろうか。
泣きたいのを我慢してきた分だけとめどなく流れ続ける涙を手の甲でゴシゴシこする。
ダムは…はいはい崩壊。誰かさんのせいで全壊。
力尽きてその場にへたり込んだら、ワレモノを扱うような手つきでそっと頭を撫でられた。
「そんなに目を擦ったら、余計腫れるよ」
「うるさい。俺だって…泣きたくねえよ。でも止まんねんだからこうするしかないだろっ」
「じゃあ俺が止めてあげる」
「こっち向いて」は魔法の呪文だ。
頬に手を添えられされるがまま降ってきたキスを受けると、しばらくしてアホらしいけど涙は本当に止まった。
そうするのが当たり前みたいに唇にもキスが落とされて、離れた瞬間至近距離で「ね、」ってささやくから心臓にも悪影響だ。
こいつ、何したら俺がどうなるとかわかっててやってんのかな。
どっちにしろどんな選択も結局行き着く先は一緒なんだから、どっちだっていいんだけど。
篠は緩慢な動作で俺の指を自分のとからめてぎゅっと握ると、熱を測るみたいに額と額をくっつけた。
よく見るとまだまつ毛が濡れてる。
こんな些細なことにでもときめく俺の胸って一体全体どーなってんだか。なんか悔しい。
「ねえなっちゃん」
「…なん、だよ」
篠に名前を呼ばれるのは好きだ。
「もう絶対離さないから、
俺のものになってくれない?」
その声とか、顔とか、表情とか目線とか。
全部が好きだ。
「お、お前が…俺のモンになるなら、そうなってやってもいいけど」
「じゃあ決まり」
全部好き。でもやっぱり悔しいから、このことは十年経つまで教えてやんない。
今までの中で一番嬉しそうな顔で笑う篠を見ながら、涙でボヤけた視界でただそんなことをひたすら想った。
【end】
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