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傷だらけ③
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その後、近所の公園の水飲み場で傷口を洗いながしてから家まで向かった。
それまでの道は途中までおんぶして行く。
だけど道行く人の視線が恥ずかしくなったのかものの五分ほどで背中から飛び降りてしまった。
おりたはいいけれど足の怪我が痛むようで、それをかばいながら歩く姿が痛々しくて肩を貸す。
そのとき一度ためらったが、素直に体を預けくれたのが嬉しかった。
家につくと2階にある自分の部屋へ通した。適当に椅子に座らせて、待っててね、と一声かけてから救急箱とペットボトルに入った水を持ってくる。
水を受け取ると、よほどのどが渇いていたのだろう。ゴクゴクと音を立て、すぐに飲み干
してしまった。
その間に消毒液やら絆創膏で自分なりに手当をしてみる。その時々、傷口に液がしみるようで、痛いと口にする。
「すっげえ染みる」
「あと少しガマンして」
「…マジで痛いんだよ下手くそ」
そんな悪態を無視して、なるべく急ぎながら手当しする。それから少し時間がかかったけれど、ようやく衣服を纏った所以外の、見える部分は全て終わった。
それと同時にドア越しにお母さんの声がした。
「ゆうちゃん?帰ったのー?」
「え、あ、さっき帰ったよーっ」
ドアの向こうからする声に慌てて返事をする。
「靴が増えてるけど、お友達?」
友達、という言葉に胸が高鳴る。
「い、一応連れて、きた、よ」
語尾が小さくなりながらもそう答えると嬉しそうな母親の声が聞こえた。
「あら!じゃあ、すぐお菓子とジュース持って行くわね~!」
呑気な声を聞いた途端、表情が一気に曇る佐木。警戒心丸出しである。
「…大丈夫?固まってるけど」
「…お前の親、俺がいたら嫌だろ」
「どうして?」
「こんな汚いカッコで上がり込んでるし、見た目だって全然、真面目じゃないし」
「いやいや、そんなの気にする人じゃないよ。むしろ喜ぶと思う」
喜ぶなんて、意味がわからない、というふうに首を傾げる佐木くん。
言おうか言わまいか迷った末、僕は目を合わせず口を開いた。
「は…初めて連れてきた…友達、だからさ」
僕は照れながら頭を掻く。
中学生になってから家に呼べる友達なんてできたことなかった。ただでさえ一人だったんだから。
佐木にイジメられていた事が原因といえば原因なのだけれど。今はそんな事関係ない。
遊びに来たわけじゃないにしろ、こうしてうちに来てくれた事がなんだか照れくさかった。
佐木くんはぱっちりした目をさらにパチパチしながら僕を見る。
「ば、ばか!余計嫌だろうが!初めてがこんな…」
そう言いかけたとき部屋のドアが開いた。
「お待たせ〜」
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