アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
無意識
-
夜七時。
晩御飯の時間になり、佐木を連れて一階へ下りる。顔の腫れはだいぶ治まってきたみたいだけどそれでも紫色の痣は見ていて痛々しかった。足もまだ痛むようで歩きづらそうなので肩を貸しながら歩く。
「すげぇ旨そうな匂いする」
二人して鼻をすんすん鳴らし目を輝かせた。
「ビーフシチューだぁ」
リビングテーブルには美味しそうに湯気をたてるビーフシチューと、ホカホカのご飯。お皿いっぱいに盛られた色鮮やかなサラダが3人分並べてあった。
「二人とも、おかわり沢山あるから、いっぱい食べてね〜」
父は夜勤でいないので佐木と美代子と僕の3人で晩御飯を食べる。
佐木はよほど腹が減っていたのかビーフシチューを何回もおかわりしていた。
小食という程でもないが、普段からおかわりなんてしない僕と比べ、よく食べるので美代子は驚きながらも喜んでいた。
「ゆうちゃんもいっぱい食べないと、サキちゃんに身長、越されちゃうわよ〜?」
いたずらっぽく笑う美代子に佐木がムキになる。
「越されるってなんだよ〜、今だって俺の方が高いし!」
リスみたいに頬をふくらませる顔が愛らしくて笑えた。
「あ、お前何笑ってんだよ〜」
それを見て僕の頬をつまむ。
「痛い痛い」
いつも母と二人で食べる時はもっと静かな食卓だった。僕はいじめられていたから、学校の事をあまり話さなかったし、母は、それを察してか無理に聞き出そうなんてしなかった。母なりの気遣いだったのだろう。
そんな毎日とは違って今日はやけに賑やかで。「なんだか子供が増えたみたいね。」そう言って笑う顔は本当に嬉しそうだった。
母のそんな笑顔を見たのは久し振りな気がした。学校の事を聞かれるのが怖かったから、母と顔を合わせ話す事を、僕が無意識に避けていた為だろう。
今思えば申し訳ないことをしていたなと少し反省した。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
44 / 79