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無意識④
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「え、今、何て…?」
確かに聞こえたその声を、頭の中でリピートする。
『キス、いいよ』
今更目を丸くする。
あっさり許可を得てしまった。
「サキくん、今の、ホント…?」
しかしその後何度話し掛けても返事はない。聞き間違いだったのだろうか。よく、分からない。
僕の頭の中は混乱しているにも関わらず、瞳は静かにある一点を見つめていた。
目を閉じたまま動かない、彼の唇。
ぷっくりとしたその膨らみは、まるで僕を誘っているようで思わず唾を飲みこんだ。
規則正しく上下する胸と、唇の隙間から小さく漏れる息の音。
見つめているうちに暗示でもかけられているかのように目が離せなくなる。
ーーこんな事したら駄目だ。
ーーサキくんはゼッタイ望んでなんかない。
そう心の中で葛藤しながらも、既に高揚しきったこの気持ちを抑えることが、僕には出来なかった。
「サキくん、ごめんね」
小さく呟き、その唇にゆっくり自分の唇を寄せる。
徐々に縮まっていく距離。
息が触れそうな程、佐木の顔が近くなり、ギュッと目を閉じる。
真っ暗になる視界。
そのまま垂直に顔を落としていくと、熱く柔らかいものが唇に触れた。
「……んむっ」
軽く押し付けたつもりが、思ったより体重が掛かってしまいバランスを崩す。
「んっ」
咄嗟に両手をベットにつくと、
ーーギシッ、とスプリングが軋む音が聞こえた。静かな部屋で、その音だけが妙に目立つ。
唇と唇が合わさったまま時間が止まる。
「………っ」
触れ合っている時間はほんの数秒だったのだろうけど、心臓が脈を打つスピードがあまりにも速すぎて体感が狂ったみたいだ。どれくらいその状態でいたのか、僕には分からない。
それから押し付けていた唇をそっと離し、恐る恐る目を開いた。
「ん、はぁ…」
当たり前だけど真下には目を閉じたままの佐木の顔がある。
傍から見るとまるで僕が彼を押し倒したような状態になっていて思わず顔が赤くなる。
「わわわわわ、ご、ごめんっ」
恥ずかしさと申し訳なさでいっぱいになり、急いでベットから離れる。
しかし焦る僕とは反対に彼は何も変わった様子はなく、静かに寝息を立てている。僕がした事にまるで気がついていない。
それを見てひとまず安堵するが、それから間を開けることなく罪悪感が僕を襲った。
「………ど、しよ」
寝ぼけて言っていただけかも知れないのに、都合の良いように解釈して、欲望に負け、唇を重ねてしまった。
「あぁ、ぼく、なんて事…」
人差し指で自分の唇に触れる。
コレを、思いっきり押し付けてしまった。
片想い中の、彼の唇に。
クーラーの効いた部屋なのに、思い出すだけで身体は火照りじんわりと汗ばんでくる。
「………熱い…」
時間が経てば経つほど恥ずかしさが増していき、今すぐ此処から走り去り、誰もいない場所へ一人逃げ出したいような衝動に駆られる。
頭の中で、あれは事故だ、本当はもっと軽く触れるようなものにするつもりだったんだ、と言い聞かせてみても、冷静に考えれば《寝込みを襲った》という真実は変わらない。
僕はどうしてこんなに堪え性がないんだろう。今日は何だかずっとおかしい。
それだけサキくんに対する気持ちが大きいのか、それともただ単に性欲が強いだけなのか。
後者でないことを祈るばかりだった。
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