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「理汰くん、もう夜中だよ」
マスターの声ではっとする。
おれ、あれからずっと固まってたのか。当然目の前にいた幸くんはいない。
「…今…何時ですか?」
声がうまく出ない。
なんだかかすれてて、絞り出したみたいな声だ。
情けない声。
「10時だよ」
「あ…」
おれ…4時間くらいここに座ったまんまだったんだ。
「…幸、一応帰るとき理汰くんに声かけてたけど…聞こえてなかったかな」
…気付かなかった。
「おれ、なんかもう、頭まっしろで……すみません」
「いや、別に大丈夫だよ。落ち着くまで居てくれて構わないし。なんかいれよう」
「え、いや、」
「動けるならカウンターに座りなよ。」
とろけるような、綺麗な笑顔をおれに向けながらマスターが手を出した。
「あ、あの、…え?」
この手が何だかわかんなくておろおろしているとマスターがくすくす笑った。
「ほら、早く立って。そうだな…ココアいれようか」
あ、この手、掴んでって事かな?
そっと自分の手をマスターの手に乗せた。
掌全体から、マスターの体温が伝わってきて…なんだかひどくほっとした。誰かの温かさを感じたのがほんとに久しぶりで、それが悲しくて。
いろんな感情が溢れてきていつの間にか視界が歪んでいた。
カウンターに座る頃にはもう号泣していた。
そんなおれを見たマスターは優しくおれの頭を撫でてくれて、おれの目の前にココアを置いてくれた。
きっと、おれに声をかける前にいれておいてくれたのだろう。そんな優しさに更に涙がこぼれてきてしまう。
「…理汰くん、うちに泊まっていきな。ズボン、びしょびしょだし」
おれの頭をずっと撫でてくれるマスターがほんとに、もう、すごい優しい声でそう言った。
見てみたらおれのズボンはびしょびしょというか、濡れて色が変わってた。
「ココア、飲んだらお風呂入りな?」
「っ……」
有無を言わせずに次々とマスターが動く。多分今立ち上がって奥に入って行ったのはお風呂をためにいったのだろう。
おれ、泊まるなんて言ってないし、迷惑になるだろうから断って
帰ろうと思ってたのに。
今優しくされたら…なんにも出来ない。
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