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悪い気がしないのは何故
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「いっちゃん〜。いっちゃ〜ん。」
「……………」
学校に着き、生徒会室に来ると今日も日野は僕よりも先に登校していた。真面目に机に向かい勉強しているかと思ったが、日野は問題用紙の文字が見えなくなる程にぐっしょりと涙を流して用紙を濡らしていた。
すぐに問題用紙を取り上げ、何で泣いてるのかと尋ねてみたが、日野は何で泣いてるのか教えてくれず、それどころか僕の顔を見た途端更に大粒の涙を零した。あと鼻水も。
「いっちゃん…俺いつになったら天才になれる?」
「君の努力次第だよ。」
「ゔぅっ…俺、最近情緒不安定や……グスンッ…うぅ」
「…………」
全く。僕のいない間に一体何があったと言うんだ。
「みっともないからいい加減泣くのやめてよ。」
ソファーで隣同士になり座っているが、日野は僕の腰にしがみ付いて一向に泣くのをやめない。
まるで子供の様に嫌だ嫌だと首を横に振り、心なしか涙を僕の制服に擦り付けられてる気がする。
「はぁ。」
手で日野の頭を押し、何とか引き剥がそうとするが、日野は全く僕から離れようとしなかった。
この状況に呆れてため息が出る。
「放課後は新も成海も君の勉強を見てくれるって言ってたんだから。君がそんな調子だと教える側はやる気を無くすでしょ。」
「…うぅっ…そ、やけんど…」
日野の大きな体がぎゅぅっと小さく縮こまり、尚も僕の腰にしがみ付いてくる。
今朝、僕の携帯にはメールが一件届いていた。珍しく成海からのメールだった。
内容は『俺も付き合ってやる。』のみ記されていた。
最初は、何に?と思ったが、すぐに、俺も日野の勉強に付き合ってやる。と言ってくれているのだと理解した。
でも、今朝は新も成海もここには来てない。
放課後から参加するという事なのだろう。
「日野。僕の服で涙と鼻水拭くのやめてもらえる?」
「グスンッ……拭いてないもん。」
「拭いてるでしょ。ちゃんとティッシュ使ってよ。」
なんで日野が泣いてるのか、全然理解出来ない。
時間がだけが無駄に過ぎていく。
勉強しないの?と聞くと日野はもう少しだけこのままでいたいと言った。
「………」
親に縋る子供だ。なんて思ったが、何故か悪い気はしなかった。
「いっちゃん…」
「なに?」
「………好き…」
「……………」
ボソリと何かが聞こえてきたが、聞こえないふりをしよう。好きでもない相手に向かい、好きだなんて簡単に口にする人の言葉なんて軽く流した方がいい。
「……いっちゃん…」
「…今度はなに?」
落ち着いた声できっと返せてるはずだ。
軽く流して早く日野のモチベーションを元に戻す事を考えなくてはいけない。
でも、なんだか今日の日野は朝から様子が変だった。泣いているからか?ワザとらしい泣き方だけど、今の彼は昨日までと少し違うと思った。
………僕がおかしいのだろうか。
「……いっちゃんから…離れたくない。」
「…………」
別に、そう言われても悪い気はしないと思うのは。
「……はいはい。」
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