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あれから数日が経った。
俺も新も、いつも通り学校へ登校し、授業を受け、生徒会の仕事を済ませ家に帰る。
変わった事といえば、新が俺の家にしばらく滞在する事になったという事だ。
理由は言うまでもない。あの日、新の母親とあった出来事がこの現状を招いた。
俺は新が家にしばらく居る事は別に構わない。
気持ちの整理がつくまでここに居たらいいと思う。
でも、ここに居るだけなら、話しは別だ。
「くぁっ‼︎また間違えた‼︎」
課題を目の前にし、問題を解き間違えた新は体を大きく仰け反り頭を掻いた。
新に勉強を教えてくれと言われ、俺の部屋でちょっとした勉強会を開いている。
「途中まで出来てんのに、なんでここから間違えるんだお前は」
「ゔっ……だってよ…」
「だってじゃない。ほら、もう一回ちゃんと初めから解いて。教えてやるから」
「……おう」
新の様子はというと、特にいつもと変わりはない。
時々、こうして俺の家に滞在する事になったことに対し、申し訳なさそうに謝ってくるのは増えたけど、それ以外は変わりない。
「……なぁ新」
「あ?んだよ」
母親の事を口にすることも無く、いつも通りに振る舞うこいつは今何を考えているのだろう。
「…いや、なんでもない」
「……?…」
あの日、新の家から俺の家に行くまでの間、新は何も喋らなかった。俺も喋らなかった。
母親に背を向けた新の背中が、いつに無く逞しく思えた。
きっと背を向けたのは、母親から逃げる為でも、母親を見捨てる為でもない。新なりに考えた上での行動だったんだろう。
あの時のこいつに、俺の言葉は必要無いと思った。
だから、何も喋らなかった。
「あ、そうだ。明日起きたら買い物行こうぜ」
「買い物?なんの?」
「昼飯作るんだよ。食料調達だ」
明日は土曜日。
張り切った声を上げ、拳を握る新に「了解」と返し、再び机と向き合う。
「眼鏡、何食いてえ?」
「言ったものちゃんと作ってくれるのか?」
「お前が作り方教えてくれたら作ってやんよ」
新はしばらくここに居る。
酷く落ち込んでる様子もなく、普段通りの新が居る。
「じゃあオムライス」
「え?」
でも、何もしないでただ居るだけは駄目だ。
何をしたらいいかお前はまだ分からないのかもしれないけれど、ここに居るだけじゃ何も解決しない。
「オムライスは作り方教えてやっただろ?買い物は付き合えるけど、その後少し用事あるから」
「なんだよ、進路関係か?」
「ううん。もっと大事な事」
「?……そ、そっか」
残念そうに肩を落とす新を見て笑みが零れる。
新自身、ここに居るだけでは駄目だと気付いてはいると思う。でも次の行動に出る事が出来ないのは一緒に居て、見てれば分かる。
「用事済んだら帰ってくるから、ちゃんと俺の分も作っとけよ?」
だからこういう時こそ
常にお前の事を優先して俺は動く。
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