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〝イヴォン〟
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「イヴォン」
主人が名前を呼んだ。
細く、長身で切れ長の瞳が印象的な若き領主。
その 手、には ナイフ が
「斬らせろ」
背中に熱が走って、痺れて、熱くなって、体が引き攣って、視界が揺らいで、頭が空っぽになって、目の前が真っ白になって、息が出来ない。
膝から崩れるように床へ躰を投げ出した。うつ伏せに倒れたが、無駄にフカフカした絨毯が衝撃を和らげた。
苦しい。小さな途切れ途切れの自身の呼吸音がやけに大きい。
気管が詰まったみたいに息を通さなくて肺は酸素を求めるのに管が拒絶する。
「…っぁ、ぐ…………う゛ぅ…」
痛くはない。ひたすらに、熱い。
こんなことをするあたり、主人は今日、相当キているらしい。
殺される、か?
ふは、と荒い息の中に自嘲気味な笑いが洩れた。どうせもう一度斬られるかこのまま放置されるかで死んでしまうだろう。
ならば言ってしまおうではないか。
「…賄賂、でも…………バレましたか我が主」
「黙れ」
ころん、とうつ伏せから仰向けになって目を合わせる。
ああ、やべぇなぁ…目がイッてやがる…
「いい気味…です……っは、ぁ…普段、は…澄ました顔しか…見れませんからねぇ…」
それを境に目の前がブラックアウトを始める。
狂気に満ちた顔でナイフを大きく振り上げる主人が見えた。
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