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運命論
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「……て……ので、……」
「…か……った…」
遠くで、声がする。
起こさないように、なのか、最小限に抑えられた声。だんだんそれはきちんと聞こえるようになってきて、意識が覚醒していくことをぼんやりと感じる。
ふっと目を開けると、主人たちがカーテンを隔てたすぐ向こうで話しているのがわかった。
起きようとして、力んだ脚が酷く痛み、そのまま ぽすっとベッドに逆戻り。だけどそのおかげで気付いたらしい主人はカーテンを開けた。
「アイヴァン…!目が覚めたんだね、よかった…」
隣に立つ医者が優しく微笑んでいた。
「ありがとうございました、先生。彼も無事に目覚められた」
使う言語がクロード卿の物になる。ということは、ここはまだ主人の国ではない。
「いえ、これも私の勤めです。彼がきちんと蘇生して何よりですね」
「本当に。―アイヴァン、君、一回心肺停止したんだよ」
恐ろしい。
「…ありがとうございます、グサロフ先生」
名札に書かれた名字を口に出した時、ツキリ、こめかみが痛んだ。懐かしい記憶が燻る。あっという間に余韻ともいうべき煙が思考回路を満たす。
『グサロフ先生、いらっしゃいませんか!!グサロフ先生!!』
夜も更ける頃、真赤な顔っをした男の子を抱えた女の人が駆け込んできた。
『…だれぇ…?』
『先生、先生は!?いらっしゃらないの!?』
『おとうさん…?…いま、しゅじゅちゅ、って…』
寝ぼけと幼さが祟った舌っ足らずな口調。
あまりの慌て様に、アワアワし出す幼い俺を後ろから抱き上げて、額に汗を浮かべたお父さんがいた。
『どうなさいました?』
幼き俺の目には、その姿は何よりかっこよく映った。
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