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僕の初挑戦
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次の日、僕はヒトミにことわって、一人で少し早めに登校した。
もちろん、先生たちに事情を話すために。
まず、校長先生に話をして、僕の病気は先生たちだけが知っていて、生徒には絶対に言わないようにしてもらった。
他の先生も賛成してくれた。
残るは、保健室の先生だけ。
僕が倒れた日、僕は急いで保健室へと運ばれ、お母さんが来るまでそこにいたらしい。
たかが保健室の先生と言ったって、先生は他の人より医療に詳しいはず。
もしかしたら、僕の体の異変に気づいてるかもしれない。
……絶対に、説得しなくちゃ。
「スゥー…ハァー……失礼します。」
保健室のドアの前で深呼吸をしてから、僕はそのドアを開けた。
「ハイハイどうぞ〜。何年何組名前を言ってねー……ってこの間の君か。確か、アズマ…?君だけっけ?」
「は、はい。実はお話があって……」
「話?いいけど、先にこれ書かせてね。あ、そこ座って待ってて。」
そう言って指さされた少しふかふかの椅子に座り、先生の方を見た。
改めて見ると、先生はとても若かった。そしてかなりのイケメン。腰までもう少しで届くというところまで伸ばされた色素のとても薄い髪を一つにまとめて、シンプルな眼鏡をかけている。顔立ちからして、外国人の血が入っているのかもしれない。ガタイがいいわけでもないけど、決して細くもない、程よく筋肉のついていそうな体。
女子たちが先生の話をしている理由がよくわかる。
こりゃ生徒にもモテるだろうな……
「嬉しくないわけじゃないんだけどねー。先生っていう立場上、断らないわけにはいかないから辛いよねぇ〜。」
どうやら、思っていたことを呟いてしまっていたらしい。残念そうに笑いながらこっちに来た先生が、「ホント、もったいないことしてると思うよー。」と僕の正面の椅子に座った。
「で?話があるんだよね?」
カチャリ、と眼鏡を外しながらこちらを見られて、思わず背筋を伸ばした。
「はい、えっと……あの、……」
緊張しすぎて、うまく言葉が出てこない。
「もしかして、こないだのことかな?」
言葉に詰まっていたら、先に当てられた。それがさらに緊張を持ってきて、僕はさらに混乱した。
絶対に説得しないと。
「そ、そうです。えっと、それで……
みんなには秘密にしてください!」
「???何を?」
しまった。
「あ、えっと、」
「病院に行ったこと?」
それもある。でも、それだけじゃない。
「あ、それも、なんですけど、もう一つあって、僕……」
あれ?なんで?
息が苦しい。
喉からゼヒュ、と音が出て、苦しくて、息ができなくて、両手で胸のあたりを掴んだ。
「……!大丈夫!?あっ、紙袋っ……!…ほら、息吸って!」
先生が、紙袋を僕の口に当てて叫んだ。言う通りに息を吸ったり吐いたりしていると、だんだんと苦しくなくなった。すっかり落ち着くと、先生は紙袋を外して椅子にもたれかかった。
「ハァー。急に過呼吸になるからびっくりしたよ。」
「すみません……」
「何、今から話すことって、そんなに大変な事なの?」
「はい、僕にとって、すごく大事なことなんです。だから……」
「おっと、ゆっくりでいいよ。ちゃんと聞くから。」
「はい……」
それから、僕は自分が病気だということ、あと三ヶ月の命だということ、先生たちには伝えたけど友達とか生徒には言わないで欲しいということ、お母さんやお医者さん、他の先生は賛成してくれたことをゆっくりと話した。
話している間に、先生の名前が如月ということを知った。
「……なるほど。だから「みんなには秘密にしてください!」って言ったのか。
わかった。秘密にするよ。」
「……!!ありがとうございます!」
よかった。よかった。
「ただし!少しでも具合が悪くなったらすぐにここに来ること!我慢はしない!わかった?」
ピッと人差し指を立てて真面目な顔をする如月先生。僕が頷くと、ホッとしたように笑って手をおろした。
「……みんなが如月先生を好きになる理由、わかる気がします。」
かっこいいだけじゃない。優しくて、ちゃんと向き合ってくれる。もうパーフェクトだ。
「えー?なに?俺に惚れちゃった?」
「いえ。」
「即答!?しかもめっちゃはっきり断られたー。センセーきーずーつーくー。」
「あはははは(棒」
「ホントに先生傷ついちゃうよ!?」
「調子に乗る先生が悪いです。」
「ごめんなさい……」
「でも、そういう先生は可愛いですよ。」
あ、赤くなった。
先生、意外に免疫ないのかな……?
「先生はからかうもんじゃないのー。」
「からかってませんよ。本気です。」
からかってるけど。
「…も、もー!とにかく、何かあったらここに来ること!はい、終わり!もー教室帰りなさい!一校時目は終わったから、二校時目から出てね。」
「わかりましたよ、そんなに押さなくても帰りますって……じゃあ、失礼しましたー。」
教室に戻るまで、笑いが止まらなかったのは内緒。
………
もっと僕に時間があったら、先生ともっと話せたのに。
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