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僕の最終通告
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「僕だってたくさん間違えたよ。間違いはなくすことなんでできないし、それで傷つけちゃった人はそのことを忘れないと思う。」
僕にとっては、ヒトミ。
そして、シュウくんにとっては僕。
「でも、だからって足を止めちゃダメなんだと思う。起こしちゃった過去があるから、やらなきゃいけないことがあるんじゃないかな。」
過去は消えないし、帰ってもこない。
「ほら…だってそうじゃん?」
生きるのだってこんなにも大変なんだから、全問正解しながら生きるのはもっと難しい。
「間違えない人なんて、いないでしょ?」
ね、シュウくん。
君はこれからを選ぶことが出来るでしょ?
一からやり直すことも、ゼロから始めることも出来る。
それは僕にはできないことだから。
もうすぐいなくなる僕が邪魔していいことじゃない。
それに、今のシュウくんならきっともう繰り返さない。
「…ズマ、くん…」
震える声で名前を呼ばれて、なんだか僕まで視界が霞んだ。
「ごめんなさい…あり、がとうっ…!」
多分それが、初めてシュウくんが許された瞬間だったと思う。
よかった。
ちゃんと分かり合えた。
じゃあ、あと一個だ。
僕がしなくちゃいけないこと。
「シュウくん。リュウくんも聞いて?明日、僕学校に行く。」
踏ん切りがついたような気分。
やらなきゃいけないってずっと抱えてたものを、初めてやりたいって思えた。
「学校に行って、話をしたいんだ。聞き入れてもらえなくても、追い返されても、伝えなきゃいけないことが…ゲホッ、う…」
話している途中に、急に胸が痛んだ。
喉の奥からせり上がってくる何かを吐き出すように咳をすれば、鮮やかな赤が手のひらについていた。
「アズマッ…!」
窓側にいたアラシが慌てて寄ってきた。心配しないでと笑ってみても、明らかに笑えてないのが自分でも分かった。
「大、丈夫だよ。ただの咳だから…ぅ…」
取り繕おうとなんとか言ってみても、すぐにまた咳が出てまるで意味がなかった。
「…なぁ、やっぱり学校来んのは…」
リュウくんが心配するようにそう言った。言葉の続きは嫌でも分かる。
でも、僕はすぐに首を降った。
「みんな、本当は優しいんだ。だから、僕が何も言わないまま死んじゃったら、少なからず自分のせいだと思うかもしれないんだ。傷ついて欲しくないし、泣いて欲しくない。だから、言わなくちゃ。」
僕は知ってる。誰より、何より。
みんなみんな、本当に優しかったんだ。
いじめられても、罵られても、殴られても。
それでも忘れられないほど楽しい思い出をくれた人たちだったんだ。
「…行って、伝えたいんだ。ありがとうって。」
それができたら、やっと安心できる気がして。
もう、僕の役目も終わりになる気がして。
寂しいような、ホッとするような。
でもやっぱり少し寂しくて、誤魔化すようにへらっと笑った。
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