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愛を囁いた
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惹かれ合うその心は気持ちは、とても美しい花を咲かせて。
「好きだよ」
「…うん」
「……好きだった」
「俺もだ」
繋ぐ手は、何時もと変わらない、あの酷く冷たい手。
愛を囁く声は何時もと変わらない、柔らかな音色。
何も変わらない、あの時のままだ。
…そうだろ?
でも、違う。
あの時のままなんかじゃ、ない。
何かが違う。
あの時とは違うんだ。
どんなに、愛を囁いたって、俺の心は温かくなんてなってくれない。
耳に残るあんたの声は、優しく俺の耳に響くのに。…どうして、俺の心はぽっかりと穴があいたままなんだ?
ぎゅっと握られた手はどんどん冷えてゆく。
温める術を持ち合わせてないこの手は、悴むばかりだ。
「…好きだ」
今度はなんて、泣きそうな声を出すんだ。
絞り出すようなその声は、虚しい程、よく俺の耳に届く。
いやだ。
鼻の奥がつんとした。
あんたが俺に愛を囁くたび、この胸の奥が痛くなる。苦しくて辛くてもう耳を塞いでしまいたくなる。
何が変わった?
何が違えた?
何が、いけない?
『変わらないものは、あるのかな』
いつか、そんな話をしたことを思い出す。
あんたはなんて、答えたっけ?
言いたいことは沢山あるのに、ぐるぐると頭を回るのは他愛ない会話とあんたとの思い出で。
(嗚呼…瞼が、熱い)
あんたと俺は、向き合って手を繋いで、額を押し当てて、愛を囁き合ってるのに。
目を合わすことなく、まるで、戻れ無い時間を探すみたいに。変わらないでと、叫ぶように。
愛を、囁いた。
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