アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
その手が落ち着く。
-
「なにやってるんですか。」
ぎゅっと瞑った目を開いて声のする方を見てみると、願った通り赤葦がそこにいた。
なんで、俺のいる場所が分かるの。赤葦の存在が認知でき、木葉は心底安心できた。
「ゲッ…お前…」
「あのときの…」
3人は苦虫をかみつぶしたような顔をして赤葦の方を見た。赤葦には絶対に敵わないと身に染みて分かりきっているため、逆らう気などさらさら無い。しどろもどろになり、目を泳がせまくっている。
「な、なんだよ、別になんもしてねーだろ!」
「その子、俺の彼女なんで手離してください。」
「お前の彼女かよ…」
手を離されると赤葦はすぐさま木葉の肩を抱き寄せた。その手が大きくて、暖かくて、息ができた。
「別に遊ばれるのは勝手ですが、くれぐれも問題を起こしたりすることは無いように。」
「分かってるわ!」
3人はそそくさと逃げるように去っていった。
「ちょっと中に入りましょうか。」
そう言うと赤葦は木葉の手を引っ張り、人気のない校舎へ連れていった。さっきまで掴まれてた、同じ手首なのに相手が赤葦というだけで感触が全く違った。
「木葉さん、大丈夫ですか?」
「う、ん…だいじょ…」
言い終える前に、極度の緊張の解放からか体の力が抜けて赤葦の方へ軽く倒れこんだ。
赤葦はタイミングよく受け止めてくれた。本当よくできた後輩だな、と木葉は疲れた頭で感心する。
「大丈夫じゃないでしょう…いいから、そこ座ってください。」
「おう…なんで、俺だってわかったの?」
「始まって真っ先に木葉さんのクラスへ行ったからですよ。いないから聞いたらビラ配ってるって聞いて…校門近くに来たら案の定絡まれてるし、震えてるわ過呼吸寸前だわで結構危ない状況でしたよ。」
「俺そんなにまでなってたの!?…でも、ありがと…本当助かった…」
赤葦を優しく、力強く、ぎゅっと抱きしめた。さっきのことを思い出すと、怖くてまた涙が出てきた。俺ってこんなに泣き虫だったっけ、メンタル弱かったっけ、もう終わったことじゃないか、と思って涙を止めようとするが、時間差で次々と溢れてくる。つい条件反射で鼻を啜ってしまった。
「木葉さんそんなに怖かったんですね。すみません、もっと早く駆けつけてたら…」
「お前ってほんと…もう十分、十分だって。そこまで言われたらさすがに先輩としてちょっときついっていうか…もうすでに先輩としての威厳失ってるようなもんだけどさ…」
「恋人を助けるのに、先輩後輩って考えなきゃいけないんですか?困ってる恋人を見放せと?後輩は先輩を助けたらダメなんですか?…木葉さんの言うことも分かりますよ。でも、すみません。俺は、はいそうですかってなんでもかんでも木葉さんの言う通りには動きませんよ。」
赤葦は珍しく怒りを露わにして捲し立て、そんな風に怒る赤葦は怖かった。稀な一面が見れてちょっと嬉しい気持ちもあったケド。
「さて、教室戻りますか。半分くらい配ってれば文句言う人はいないと思いますよ。」
「そうだな…」
「にしても、その女装本当完成度高いですよね。一目じゃ全然分かりませんでしたよ。」
「女子が張り切ってメイクまでやってくれてな。でもお前見破るの早くね…?」
「まあ、恋人ですから。」
「う、おぉ…」
「っていうのは大袈裟ですけど、身長とかで大体検討つきました。」
「やっぱ身長か…」
あれ、っていうことは身長を抜けば赤葦でも分からなかったってことじゃね?
メイクを手掛けた女子たちの技術力の高さを思い知った木葉であった。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
57 / 73