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「どうしてこんなところまで来たんだい?」
という三日月の問いに、暁丸はこうこたえた。
「だってしょうがねえじゃねえか。なんかムラムラしちまったんだもん」
口をとがらせ、拗ねたように、だが、この上なく真摯にこたえる若き竜に、白い蛇神は穏やかな笑みを向けた。
「なるほど。君は、とても若いんだねえ、異国の御方」
「おまえ、竜の寿命知ってっか? 俺、こう見えてももう、そこらの人間なんかぜってー比べもんになんねえほど長生きしてんだぞ?」
若く紅き竜は、やはり口をとがらせたままそうこたえた。
「なるほど」
白い蛇神は微笑みながらうなずいた。
「御無礼を働いてしまったのなら、どうかお許し願いたい。何分異国の礼儀作法にはあまり通じていないもので」
「別に無礼とは思わねえがな」
紅い竜はぶっきらぼうにそうこたえた。
「ところで、お名前をうかがってもよろしいだろうか、異国の御方」
「は? さあ、知らねえな」
「え?」
「俺、名前なんかねえよ」
紅い竜はあっさりとそうこたえた。
「人間どもとかはなんか適当に俺のこと呼んでるのかもしれねえけど、俺そんなの知らねえもん。え、なに、名前って、ないとまずいのか?」
「まずいというか、不便だし、それに――」
「それに?」
「それに、少し寂しいね」
白い蛇神は真顔でそう言った。
「だったら私が、君に名を贈ってもいいかな?」
「へ? おまえが俺に?」
紅い竜は、驚いたようにその金の瞳をしばたたいた。
「だめかな? いや、かな?」
「別に、そういうわけじゃねえけど」
紅い竜は目をしばたたきながら白い蛇神を見つめた。
「おまえ、俺のことなんて呼びてえの?」
「そうだな――暁丸、というのはどうだろう?」
「あかつきまる……」
紅い竜は、幾分ぎこちなくそうつぶやき、ついで、パッと目を輝かせた。
「うん、なんか気に入った!」
「そうかい? それはよかった」
「なあ、おまえの名前は?」
紅い竜――暁丸は、あっさりと無造作にそうたずねた。
「私の名は三日月。この村の人々には昔からずっと、三日月と呼ばれているよ。君もそう呼んでくれるなら、私はとてもうれしい」
三日月は、サラリと楽しげにそうこたえた。
「じゃあ、俺もそう呼ぶ!」
暁丸は屈託なくそう叫んだ。
そうして、赤き竜と白き蛇との間に絆が結ばれた。
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