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「なあ」
「ん?」
「おまえ、ずーっとこの村にいるの?」
「そうだね、蛇神になってからは、ずっとこの村に住まわせてもらっているよ」
「ふーん。……退屈しねえ?」
「退屈は、しないねえ」
「なんで?」
「え? なんで、って、え――退屈しないと、なにかおかしなことでもあるのかい?」
「っていうか、なんでこんな狭いとこにずーっといて退屈しないんだ?」
「確かにこの村は狭いといえば狭いけど、でも、毎日まるで違う姿を見せてくれるから、私は全然退屈なんかしないよ?」
「ふーん? 俺にゃあよくわかんねえな」
「それはまあ、そこらへんは君と私とでは感じかたが違っていて当然だよ」
「……なあ」
「ん?」
「どこかに行きたいって思ったこと、一度もねえの?」
「そうだね――そういうふうに思ったことが一度もない、と言ってしまったら、それはきっと、嘘になってしまうね。――でも」
「でも?」
「それでもやっぱり、私はこの村を愛しているから」
「……なあ」
「なんだい?」
「『あいしてる』って――どんな感じだ?」
「……そう、だね……」
白い蛇神は、幼い紅い竜を愛しげに、それと同時にわずかに痛ましげにジッと見つめた。
「とても――とても――とても、あたたかい、心持ちだよ――」
「……暑いのや、熱いのとは違うのか?」
「そうだね、そういうふうに、なることもあるね」
「でも――寒くは、ない?」
「そうだね――うん、そうだね、寒くはないよ。うん、寒くは、ない」
「……なあ」
「ん?」
「おまえ、寒いのとあったかいのとどっちが好きだ?」
「そうだねえ、なにしろ私は蛇だから」
三日月は暁丸に、穏やかに微笑みかけた。
「だからやっぱり、寒いよりはあたたかいほうが好きだねえ」
「……ふーん……」
紅い竜の金色の瞳と、白い蛇の緋色の瞳とは、しばしの間、穏やかに、だがどこか熱っぽく、しっとりと絡みあっていた。
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