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Prologue.
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これは俺とユキヤの一週間の物語
…そう、最後の一週間の物語だ
*
新作ゲームを買った
待ちに待った新作ゲーム
「あなたがそこにいるのなら、力ずくでも連れ帰る」
勇者である主人公が世界中を旅して、人々を助けながら、大切な幼馴染みを救うゲーム
それも、製作発表では秘密にされた新機能がついてるらしい
序盤で選べる難易度で難易度MAXで遊ぶとできるらしい
今から楽しみだ
流行る気持ちをおさえ、電源ボタンを押した…
*
俺の名前は立脇 優(たてわき すぐる)
勇者という設定のこのゲームの主人公である
攻撃力は1623、防御力は2125、
素早さは421
弱い敵は基本、攻撃力は1000を越えないから、戦闘に苦労したことはない
そうやって、何もかもが決められたこの世界で、俺は優遇され続けた
スグルならできる、スグル、頼んだ
…何がスグルだ
ヘドが出る
だいたい、自分の身は自分で守れよモブキャラども
いくらこれがゲームだからって、
なんで見ず知らずの国とか人間とか助けなきゃいけないんだ
こんな偽善者生活嫌だ
つまらなくて、つまらなくて
…でも、そんなときに俺は出会った
部下になった一人の男
深澤 道哉(ふかざわ ゆきや)
部下のくせに
部下のくせに戦闘に参加しないなんて
「ユキヤ!早く参加しろ!」
「だって、あんた一人でも勝てるじゃないですか」
「だからってなぁ!」
「いいから、パパっとお願いします」
パパっとって…
とにかく、敵を切りつけ終わると、ユキヤが言った
「お疲れさまです」
そしてスタスタと歩いていってしまうのだ
「もっと、感謝とかないのかよ!」
走って追いかけると、彼の切っ先が光った
思わず目をつぶる
ただ、彼が切ったのは俺ではなく、俺の後ろの魔物
「これで、俺も働いたってことで」
やつは、変なやつだった
回りを見る目に優れ、俺よりも強いだろうに、戦うのは俺ばかりで、ほとんど手を出さない
時々俺が囲まれると、周りを一掃してくれるけど、それまで手を貸してくれないし
すごく変なやつだ
だけど、なんか時々優しくて
いつのまにか、互いに背中を守りあうようになった
俺と同等に戦える、足を引っ張らないやつはユキヤだけだった
「ユキヤ、行くぞ」
「はいはい」
敵に斬りかかり、殺しあって
命がけの戦い共にして
…その一つ一つを終える度、俺はあいつに惹かれていった
やる気のないくせに、たよりがいのある強さ
それに、戦いのあと、俺を優しく見てくれる目
唯一信頼できるやつだった
それが、恋愛感情に変わっていた、なんて、誰が予想できただろう
俺だって信じられない
それに、確かユキヤには、妹がいる
両親も妹も村で暮らしており、旅が終われば、幸せな家庭のある、村へ帰っていくのだ
それを
それを俺は壊すわけにはいかない
「…」
「なに考えてるんですか?」
考え事をしてる真っ最中に、声をかけないでほしい
思わず飛び上がりそうになった
どうやら何度も名前を呼ばれていたらしい
「まったく、町なら思う存分悩んでもらって結構ですけど、周りを見てくださいね」
そういったユキヤの後ろには、魔物
今にもユキヤに襲いかかりそうだ
そんなことさせてたまるか
「ちょ、立脇さん?」
なんで名字だ
イライラする
いつものことなのに
イライラする
こんなにイライラしてる自分にもイライラする!
敵を斬って返り血を浴びてると落ち着く
斬り殺して、魔法使って
こうしてればなにも考えなくていい
なにも
「立脇さん、止まりましょ、敵も怯えてますし」
知るか
「俺に指図するな!」
すべて、斬り殺して、経験値も金も増えた
これでいい
次へ行こうとすると、ユキヤの手が俺の腕をつかんだ
「あんたがやったことは、魔物と変わらないことだ」
「だからなんだよ」
「あんたがそれでいいならいい。勇者であるあんたは、こんなところで魔物になり下がるやつじゃないと思ってただけです」
…じゃあどうしろっていうんだよ
勇者ってなんだよ
ただの偽善者だろ!?
なんで人も魔物も助けなきゃいけないんだよ!
もう嫌だ!
勇者なんて…こっちから願い下げだ
走り出した
なにも見たくなかった
特に…ユキヤの悲しそうな表情は
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