アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
欠席ー3
-
「……ぇ…?」
うずくまり、朦朧とする意識の中に聴こえたチャイム。
え、なんだ?
なんのチャイム?
と、あまり危険に思わなかった俺だが、次に聴こえたものに体を固まらせた。
ガチャ。
そう、ドアの開く音を。
「え…?ま、……て…」
たんたんと階段を上る音。
母さん、家に鍵をかけて行かなかったのか!!?
待って…。
怖い。
誰か来る。
「や…だ……」
俺は恐怖に部屋の隅へと移動しようとするが、吐き気が襲ってくるのを防ぎながらとなるとなかなか上手くいかない。
嫌だ。
嫌だ嫌だ!
とん、と俺の部屋のドアの前で足音が止まる。
俺の足まで止まる。
逃げなきゃいけないのに。
動けなかった。
ガチャリと、音を立てて開くドアに俺はただひたすら体を小さくして、顔を三角座りの足の間に隠し、耳を塞いだ。
「何してんの」
微かに、声が聞こえる。
なんて言っているんだろう。
怖い。
なんてーーーーーーー
「おいってば!!!!」
「ぅ、わ!!!!!?」
急に耳を塞いでいた手を掴まれた。
その反動で俺は顔を上げる。
そして俺は驚きのあまり、数秒声が出なかった。
「…ぇ、お前…なんで……」
目の前にいた奴が、
「もう、喋んないでいい」
雪城だったから。
そいつは、そのまま俺の顔に手を伸ばし、目元に親指を這わせた。
「ごめん、怖かった…?」
「え?」
目尻を下げながら言う雪城に、何が?と聞きたかったが、目から溢れ出る涙が頬を伝うのを感じて、聞くのをやめた。
「…ぅ…あ……っ」
一度流れると、それは止まらなかった。
「………」
そんな俺を見て、雪城は無言で見つめた後しゃがみこみ、俺を抱き締めた。
え…?
「…変わんない……」
ぼそりと、俺の耳元でそんなことを言う。
「君は、何も変わらない……」
「何言って…?」
ゆっくりと、上下に背中に回された手が動く。
「雪城…?」
ぐりぐりと、ふわふわした猫っ毛の頭を俺の肩口に押し付けてくる。
本当に、猫のような甘え方だった。
俺が安心させてもらっているのか、
雪城が俺で安心しているのか、
これではまるでわからない。
「……ん、」
「え、うわ!?」
小さい呻きの後、雪城の手が両脇に差し込まれてぐっと持ち上げられた。
「なにするんだ…?」
「ベッド。寝て」
ゆっくりと振動にならないように歩き、そっとベッドへと下ろしてくれる。
「これ、食べて、飲んで」
ずいっと目の前にコンビニの袋を持ってこられる。
そっと受け取ると、中にはスポーツドリンク、フルーツ、ゼリー、ヨーグルト。
風邪をひいたときによく食べるものだった。
「ありがと…」
「飲み物、飲まないと脱水起こすよ」
と、コンビニの袋からスポーツドリンクを取り、キャップを開けてくれた。
そのペットボトルに手を伸ばして受け取ると、少し体を起こして飲み口に唇をつけた。
「んっ……く…」
カラカラになっていた喉が、すーっと潤っていく。
「ありがと」
十分水分を取った後、雪城にペットボトルを渡す。
「あの、雪城…なんでお前、ここにいんの」
キャップを閉めて側のテーブルにスポーツドリンクを置く雪城にきく。
けれど、雪城は無言で俺の肩を押してベッドへと寝かせ、上に布団を掛けてくれると、
「もう寝て」
と、一言言って俺の目を手のひらで覆った。
なんでここにいるのとか。
学校は?とか。
なんで俺の家知ってるのかとか。
いろいろききたかった。
けど、あまりにも真剣な顔で、声で言うものだから。
「わかった…」
俺は素直に目を閉じて、眠ることにした。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
42 / 334