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価値観。
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ナギが不思議そうに見上げてくるのを感じながら、大袈裟でなく倒れそうになる。
ナギの言っていることは理屈では理解できる。
体と心は別だ、というのがナギの価値観だ。
それはどうやったって変えられないし、僕が説得してなんとかなるものではない。
けど……駄目だ、ナギが風俗で働くのは絶対に許せない。
どれだけ僕が寛大でも無理な話だ。
はてなマークを浮かべるナギの肩に手を置いて、諭すように語りかける。
「あのね、僕はナギの内面はもちろん好きだけど、体も大切だし、誰にも渡したくない。僕にとっては外も中も、ナギはナギなんだよ」
「………」
ナギが沈黙した。
そして、ぽっとその頬が染まる。
「そっ…か。なら仕方ないな!」
「な、納得してくれるの?」
「うん。だってセンセー、それだけ俺のこと好きなんだろ?それに……考えたら、先生と付き合ってんのに他のやつとヤるとか、完全に浮気だった」
もう言わない、とナギがしゅんとする。
僕が「ナギの全てを受け入れる」と言ったんだから、それを突き通してしまうことも出来た筈だ。
それでも素直に承知してくれたナギにほっとする。
「良かった。じゃあお店は辞めてくれるね?」
「判った。でも、それじゃあ俺これからどうしよう…」
「心配いらないよ。このままここに住んだらいいし、僕が生涯養ってあげる。どうしてもっていうなら食事を作ってくれてるって名目で対価を払うし」
「それはダメだ。だってそんなの悪いし、それに金もらうなんてなんか愛人っぽい。やだ」
あ、愛人……
突拍子もないナギの発想にくすりと笑みが漏れる。
「じゃあ、僕の実家で雇うよ。それならいいかな」
「実家…?先生の実家って何してんの?俺ができることある?」
不安そうに見つめてくるナギに微笑む。
「もちろん。ちょうど人が欲しいって言ってたし、ナギほどの適任はいないと思うよ」
何してるの、という質問は適当にはぐらかす。
まぁ、どうせ判ることだしね。
「判った!じゃあその、よろしくお願いします…?」
使い慣れない敬語のナギが可愛くて、思わず笑顔になる。
「うん、こちらこそ」
「じゃあ、店辞めるなら俺挨拶行かないと」
ナギが元気になって笑顔を向けてくる。
まぁ、最後ぐらいはお店に行くのを止められないかな。
「そうだね、僕も行くよ」
そうナギに応じた時はまだ、その挨拶がどれだけ大変か身をもって知ることになるとは思っていなかった。
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