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昨夜はあれから二本ビールを飲んで寝た。
翌日、めずらしく頭痛がして京介は気だるい気分で大学に向かう。
「京介」
よ、と明るい口調で健吾に声をかけられた。
「はよ」
京介は小さく笑みをみせて返すと、健吾がわずかに眉を寄せる。
「どうかしたのか?」
「なんで」
「暗い顔してるから」
健吾の言葉に京介は軽く肩を竦めてかぶりを振った。
「別に。ただの寝不足」
「そうか?」
健吾は京介のこういうちょっとした変化にすぐ気づく。
それが嬉しくもあったが、今となっては複雑だ。
「朱実と一緒じゃないのか」
同じマンションに住んでる二人は、いつも一緒に登校しているが、今日は健吾一人だった。
「うん。朱実、つわりがひどくてさ。今日は寝てる」
「そっか」
大変だな、と気づかいをみせると健吾は複雑そうな笑みをみせた。
「俺さ。朱実が妊娠してるって分かって、結婚決めて、親よりも真っ先にお前に報告したんだ」
「え」
「・・・・・・朱実に京介に真っ先に報告したいって頼んで。お前が喜んでくれたとき、俺すげー嬉しかった」
照れくさそうに笑いながら健吾がいう。
「ありがとな。俺もお前の幸せを誰よりも願ってるよ」
京介は心にもないことを告げていた。昨夜、さんざん泣いたのに健吾の幸せそうな顔をみると、胸が締め付けられる。
失恋の傷は当分癒えそうになかった。
その日も講義の後、コンビニのバイトが入っていて京介はレジをしていた。
ひょっこりと顔をだした聖也に京介の顔をみるなり開口一番、言われた。
「あら、今日はいつにも増して不機嫌な顔」
「・・・・・・」
どうしてこの男はいつもこうなのだろう。
「谷さん、今仕事中ですよね?」
「うん。仕事中」
京介の皮肉も笑顔でさらりと返す。聖也はニコニコと笑みをみせながら言った。
「スタッフの体調を見るのも、仕事の内だからね。竹垣くん、二日酔いでしょ?」
「・・・・・・っつ」
聖也がレジの外から身を乗り出すようにして顔を近づけてくる。
至近距離で見る聖也の顔は本当に綺麗で、京介は思わず息を呑んだ。
京介は後ろを向き、伝票の整理をはじめる。
「明日、シフト入ってないでしょ?」
「ええ」
「俺とデートしよう」
さらりと口にする聖也に京介は思いっきり顔を顰める。
いくら誰もいないからといって、こんなところで堂々と誘うなんて気がしれない。
「谷さん」
「美味しいもの、ご馳走するよ?何が食べたい?」
京介の胸中などお構いなしに迫る聖也に頭を抱えたくなる。
どうせなら高級な店でも強請ろうかと、意地悪い思考が頭を駆け巡った。
「すき焼き。高級な店の」
「すき焼きね。いいところ知ってる」
「え」
「明日、新宿駅に七時に待ち合わせしよう、番号、教えて?」
聖也がスマホを取り出して促してくる。冗談のつもりで言ったのに、とあっけにとられながらもスマホを取り出した。
番号を登録して聖也が満足げに頷く。
「よし。明日、腹すかして来なよ」
とびきりの笑顔をみせる聖也にドキッとする。
ほんの冗談のつもりで言ったのに、訂正する間もなく呆気にとられた。
「あ、あの」
慌てて取り繕うとするが、客がレジ前に来て京介はそれに対応する。
「あ、松風店長。そろそろ失礼します」
奥の事務所から出てきた店長に機嫌よく聖也が挨拶すると、店長も笑顔で返す。
「お疲れ様でした。またよろしくお願いします」
最後に京介にウインクを残して聖也は軽快に店を出て行った。
呆然とそれを見送っていると、また客が来て京介は慌ててそれに応対する。
突然の誘いに動揺は収まらなかったー。
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