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☆帰る場所
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俺に最初に花を渡してくれた照れ屋の男の子は雅人(まさと)くん。
隣に座って楽しそうにお喋りしてるのは あゆみちゃん。
雅人くんの後ろに隠れていた男の子は駿(しゅん)くん。
女の子は水樹(みずき)ちゃん。
一人一人、俺に自己紹介をしてくれた。
この4人は近くの幼稚園に通っていて、とても仲良しなんだとか。
4人がきゃっきゃっと笑って楽しくお喋りしてるのを見ているのは凄く癒される……。
元々、俺は子供が好きで、アパートで暮らす前までは近所の子を預かったりしてるから子供の面倒はできる…と思う。
いつの間にか4人は、俺の事を「お兄ちゃん」から「明くん」に呼び名が変わっていた。
そして ふと時計を見た。
………もう少しで5時すぎる。いくら夏でも5時は、もう夕方だ。
皆も帰らせないと……。
帰る…か……。
皆は帰る場所が、家が、居場所がある……
でも俺は………?俺はどこに帰ればいいの…?
この子達には、時間が遅くなれば迎に来てくれる人がいる。
でも俺には……遅くなっても、きっと蓮は迎えには来てくれないだろう……
目が合っても目をそらした蓮。
俺の顔なんか……見たくないのかな……?
「……ん!……ぁ…きくん…!明くん!」
考え事をしていたら大きな声で名前を呼ばれてビックリした………
ハッとして見れば心配そうに眉を八の字にして見つめる4人…
「え、ぁ……ご、ごめんねっ…?
少しぼーっとしちゃって……」
焦りながら謝ると隣の あゆみちゃんがギュッと俺の手を握り締めた。
すると、水樹ちゃんがチョコチョコと歩み寄ってきて、俺の隣に座って俺の手を握り締める。
両隣の2人が手を握っている。
……どうしたんだろう…?2人とも泣きそうな顔してる……。
そんなことを考えていると、あゆみちゃんが ゆっくりと口を開いた。
「明くん……どうして泣いてるの…?」
「っえ…??」
あゆみちゃんの発言にギョッとしてると駿くんが俺の頬を撫でて言った。
「明くん、ほっぺた濡れてる……」
自分の手で触ると、頬が濡れていた……
俺…、泣いてたんだ……。
無自覚の涙は……初めてだった。
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