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「寂しいです」 side司
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「ただいま! 水音、大丈夫か!?」
俺は革靴を脱ぎ捨て、玄関にカバンを置きっぱなしにしたまま、青い顔でリビングに飛びこんだ。
水音には電話の使い方を教えていたにもかかわらず、今日は一度も電話がかかってくることはなかった。
また倒れでもしていないか気が気じゃなかった。ソワソワしたくなるのを必死で押さえつけ、できるだけ早く仕事を切り上げた。
…おかげで市丸部長にはドヤされたけどね。
そんなことより!
「水音!!」
水音はすぐに見つかった。窓からの景色を見ていたのか、ガラスの前で丸くなっていた。
ジッと見るうちに、水音が呼吸をするたびに横腹が動いているのが分かった。
なんだ…寝てるだけか…。
リビングのテーブルに飲みかけのペットボトルがあった。昨日に比べてだいぶ飲んだようだ。それでも3割は残っているけれども。
「んゥ……?」
「水音?」
「つ、かささん?」
水音は寝ぼけているのか、ガラスに映る俺に両手を伸ばしている。俺はあわてて水音に近寄った。
「水音、俺はこっちだ」
「ン……」
水音は俺の声に反応し、当然とばかりに俺に抱きついてきた。
…なんか子どもができたみたいだ。
「ってあれ? お前、目、腫れてないか?」
まるでついさっきまで泣いていたみたいに真っ赤な目元に、俺は思わず手を伸ばした。
水音は最初はイヤイヤをするみたいに俺のスーツに顔をこすりつけていたが、やがて目が覚めたのか大人しくなった。
「司さん…」
「お?」
「ボク、いつから…」
「覚えてないのか? 俺は今帰ったばっかりなんだよ。泣いたみたいだけど怖い夢でもみてたのか?」
とりあえず昨日のようにぶっ倒れてはいないらしい。まるで胸のつかえがとれたみたいだ。
水音のことが心配でしょうがない俺に、水音は一世一代の決意をしたかのように俺の腕を引っぺがした。
「司さん!!」
「お、おう?」
「お、おおおおかえりなさい!!」
……………
……………
俺は思わず吹き出した。
「あっははははは!!」
「?」
水音はいかにも怪訝そうに赤い目で俺を見つめてくる。
俺は水音の肩をバシバシ叩き、しばらくの間笑い転げた。
水音が叩かれすぎて咳込みはじめたところでようやく俺も笑いを止めた。
「なんでそんなどもるんだよ。ふつーに言えばいいだろ、ふつーに!」
「だって…」
水音は少し口を尖らせると、また俺に抱きついてきた。
顔をのぞき込むフリをしたらサッと顔を背けられた。一瞬見えた水音は少し赤みが増して見えた。
水音が照れてるゥ!!
さらに大声を上げて笑う俺に、水音の抱きつく腕の力は強くなった。
「なんだなんだ? 俺がいなくなって寂しかったか? うん? あ、だから泣いてたの!? あっははははは!!」
「……うん」
「ん?」
「寂しい…です」
「え?」
カチンと固まった俺に、水音がトドメをさした。
「司さんがいないから…寂しい、です」
………
………
………
デ、デレたーー!!!
水音がデレたー!!!!
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