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鏡獅子が去ってから、俺ものろのろと立ち上がり、橋を渡ってうちの前まで帰って来た。
ちょうどおふくろが、郵便受けから夕刊を取り出しているところだった。
他の郵便物がひっかかっているらしく、手こずっている。
「ああ、おかえり。」
「ただいま・・・。どうした?」
「うん、なんか・・・・。」郵便受けに手を差し込んでごそごそしていたが、
「ああ、とれた。ま・・・・なに?これ。」宛名を見て俺に差し出して来た。
受け取って見ると、俺宛の封筒だった。
普通の白無地の封筒だが、なんだか異様に膨らんでいる。
でも軽い。裏面を見たが、差出人の名はなかった。
もう一度表書きを見る。ドクン、と心臓が跳ねた。
この字。少し角張った、大きさの揃わない不格好な字。
藤川?
「誰から?」おふくろが訝しそうに訊いた。
「ん。後輩・・・だと思う。劇団の。」少し声がふるえた。
「なにかしらね。ずいぶん膨らんでるけど・・・。」
俺は、封筒の端を指でちぎって開けた。
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