アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
5.自己嫌悪と反省-6
-
三善にとって夏はただの仕事仲間であり、一つの作品でもある。
三善の選んだ服やアクセサリーを身に付け、夏はカメラの前に立つ。
そして、三善の選んだ服を着て演技し、三善の腕を世間へと広める。
最後のエンドロールに名前が出る時ほど、嬉しい事はない。
〝スタイリスト〟の所に自分の名前が出ると、心の中でガッツポーズをするほどだ。
それは、三善にとって自分の存在が認められたような気がして嬉しかった。
だから、この仕事を辞められないし、辞めようとも思わない。
「僕は仕事だけしてればいいんだよー……。それでもって、抱かれたくなったら良さそうなの探して誘惑してぇー……抱いてもらう……」
その繰り返し。
それが、三善の生き方だ。
仕事を一番に考えてれば、何かと上手くいく。
出会いも広がり、同類との交流も増える。
だから、今更恋だのなんだのなんて言ってても仕方ない。
「栄二……」
「そんな目で見るなよな……。僕、別に一人でも寂しくないよ」
ずっと、一人で生きてきた。
心の支えなんて無くても、生きて来れる事を幼い頃から知っている。
「だいじょーぶ……。僕は恋なんてしなくても、恋人がいなくても平気だから」
〝平気〟
その言葉を三善は何度も言ってきた。
その言葉を言う度、まだ、まだまだ大丈夫だと思えるからだ。
弱音なんて吐きたくない。口にしたくもない。
だから、三善は笑みを作り瑠偉にそう言う。
そして、三善は空になったグラスを店員に渡し、新しいカクテルを注文したのだった。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
44 / 192