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13.笑顔の三善、泣いてる三善-1
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三善はさっきまで座っていた椅子に座り、夏の手をギュッと握ったまま話しを聞いた。
もう、離してもいいとは思った。
けれど、離れ難かった。
「俺、事故の事はあんまり覚えてないんすよ。咄嗟に目の前の子供をなんとかしないとって思ったから……」
夏は上半身を起こし、話し出す。
三善はその話しを黙って聞いた。
「でも、意識がない間、長い夢を見てました……」
「長い夢……?」
「そう。三善さんの夢」
「僕の夢……?」
夏はそう言うと、繋いでいる手をギュッと強く握り返し、その手を優しく摩って来る。
「中学くらいの三善さんが出て来て、俺に笑顔を向けながら、俺の左手を強く握って走り出すんです。そして、花畑みたいな場所を三善さんに手を引かれながら……二人で走った……」
夏は、笑顔の三善を見て、とても嬉しかったと言った。
三善がこんなにも笑った顔を、ずっと見たかったと夏は言った。
「その時の俺は、三善さんの笑顔を見て安心しました。それに、このまま、二人でいたい。そう、思ってました……でも……」
「でも……?」
「背後で、泣き声が聞こえたんです。俺はその声を聞き、後ろを振り返った……。そしたら、後ろは真っ暗な闇で、そこで三善さんがポツンと一人いて…泣いてたんです……」
「僕……?」
「そう。……蹲りながら、その小さな身体を自身で抱きしめながら…泣いてたんです……」
夏は、自身の手を握っている笑顔の三善と、後ろにいる、泣いている三善を交互に見比べたと言う。
どっちが本物かと、そう、思ったからのようだ。
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