アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
譲の高校卒業式 4
-
気づいたら、俺の同級生である隼人の弟が、部屋の入り口に、たたずんでいた。いつの間にか帰って来たのだった。どこかで着替えたらしく、制服ではなかった。
動きが止まり静寂が流れた。
「あ、兄貴……なにやって……こ、こんなの……ふ、不潔だ……不道徳だ!」
友人は、そう言って、目に涙をいっぱいためたかと思うと、ぼろぼろ泣き出した。
隼人は狼狽して、いそいで、シャツを引っ掛け下着を履いて、弟のそばに駆け寄った。
「ごめん」
「兄貴……否定しないの? 違うって言わないの? これは違うんだって、言ってよ! どうして、ごめん、だけなの? ごめんって何さ? 認めるってこと?」
「ごめん……そうだね。認める……。うん、してしまったことだから。お前に配慮しなくて、ごめんなさい」
「僕の友達だよ? ひどいよ。もう、信じられない。兄貴なんか、嫌いだ! 大洗も、もう家に来ないでくれ。僕、無理だ」
友人は、そう言って隼人の部屋の入り口を去ろうとした。俺は、慌てて言った。
「まてよ! 待って。俺、君の兄さんのこと本気で好きで、尊敬してて、全然遊びとかじゃないんだ。それに、隼人さんは、悪くないんだ。いつも君のこと大事に思って、可愛いがってて、自慢にしてて、もちろん俺だって、君のこと友達になってくれて嬉しくて、感謝してて。ほんとだよ?」
「ごめん、僕、寛容になれない。無理なんだ。何言われても、今は無理。ショックが強すぎて無理。ほんと、悪いんだけど、大洗とは、もう、顔合わせられないと思う。僕、兄貴のことすごく尊敬してたから、ダメなんだ。これ以上怒らせないで。大洗のこと、嫌いになりたくないから、二度と会いたくない。いい思い出だけ持ってたいから。もう二度と僕の前に現れないで、お願い」
「おい、ちょっとそれは、ひどいだろう。ごめん、譲。弟のやつ、今、ショックで混乱してるみたいだ」
「僕より、大洗の方をかばうんだね? そんなに……いいんだ? いやらしいよ! 兄貴がこんな男だと思わなかった。近寄らないで! 僕に触らないでよ」
「ごめん……興奮してるんだね。無理もない。ほんとに僕が悪かった。浅はかだったよ。大洗君には、車を呼ぶよ。それか、駅まで送ってこうか? 駅か大通りに行けばタクシーつかまえられると思うから」
「いいです。自分で帰れます」
俺は言った。
「じゃあ、タクシー代渡すよ」
俺と隼人は、服を着た。
「じゃあ、帰ります。ごめんなさい。おじゃましました。さよなら」
俺は、友達の部屋に向かって声をかけたが、隼人の弟である、俺の同級生は、向かいの自分の部屋にこもったきり、出てこなかった。返事もなかった。
「ごめんな。あいつ、意外と繊細なんだな。明るくしていて、友達も多いようでいて」
隼人は、俺に詫びた。
「いえ、隼人さんは悪くないです。調子づいた俺が悪いんです」
俺は、しおたれて言った。
「そんなことないよ。ごめんな。せっかくの卒業式の日に、こんなことになって。もっと、いいお祝いしてあげるんだった。僕も、もっと何かいいお祝いごと考えておけばよかったよ」
「いえ、俺、ほかのお祝いなんて、いらないです。隼人さんがほしかったから」
「ごめんな」
隼人は、俺がいいというのに、玄関を出て、大通りまで送っていくと言った。
「俺は、武道の心得があるから平気だけど、隼人さんは危ないから、ほんといいです」
と断った。
「弟君のこと、心配してやってください。本当、ご迷惑おかけして、申し訳ありませんでした」
と俺は謝った。
隼人は俺を慰めるように言い訳するように言った。
「そんな、いいんだ。あいつは、ちょっと、俺のこと理想化しすぎで、兄貴大好きで、いつか俺に彼女ができたり、結婚したら、どうなるんだ? なんて言われてたくらいなんだ。だから、遅かれ早かれ、ショックは訪れたわけで」
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
48 / 252