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トモと昴 「土曜の夜」
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自分は人にすっぽかされても、ちょっとがっかりしてムッとするくらいで、すぐ気持ちが切り替えられるほうだった。他の友達と遊ぶか、一人で何か楽しむことにしよう、とすぐ気持ちを変えられた。
初めての人とでも楽しめたし、わりと誰とでもすぐ仲良くなったので、昴の怒りが全くわからなかった。
合宿の夜、スマホから昴に電話したが出なかった。何度電話しても昴は、電話に出なかった。
喧騒を抜けて、白い会議テーブルと椅子のあるグループが居間のように使える休憩コーナーに来て、本格的に時間をおいて何度も電話やメールをした。
拗ねているのか、ふて寝してしまったのか。
ちゃんと飯食ったかな。
弟のジュン君のことも聞いていたので、万が一危ないことでもと不安がよぎったが、打ち消した。
自分で物を放り投げて散らかした部屋の中で、ベッドの布団にくるまって、涙の跡を頬につけたまま、きれいな顔で眠っている昴の姿が目に浮かんだ。
少しの後悔と愛しさという傲慢。
帰ったら抱いてやりたい。
しかし、と思いかえした。
出がけのあの騒ぎを毎回やらかされるなら、困るな。
いや、それも込みだよな。
十分予測できるそれも込みで……。
いや、予測なんてしてなかった。
「女か?」
友人が見かねたように声をかけてきた。
「いや」
スマホの画面を見るトモに
「モテる男はつらいな」
と友人は笑いかけた。
「そんなんじゃないよ」
「水くさいな。トモにしては、えらい深刻そうな顔してるぞ」
「俺、そんなにいつもヘラヘラしてるか?」
「そうじゃないけど。何か悩みでもあるのか?」
「ああ」
俺は、相手が男だということは伏せて、出がけの騒ぎを、その誠実そうな友人の木村に打ち明けることにした。
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