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april.4.2016 ハルの指南-ギョニケチャ&トンノロッソ
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「まず、パスタをゆでるお湯をわかします。麺の目安は一人100gですね。食欲によって調整してください。」
「どうやって100g計るんだよ。」
「これは1袋500gなので、まずは半分とります。ということは250g。そっから目安で1/5をとると200gになりますから。だいたいでいいんですよ。気になるならパスタスケールを買ってください。」
「適当にしておく。」
「オリーブオイルでニンニク炒めます。煙出るまで熱するとか無しでお願いしますね。じっくり炒めて香りをだしましょう。」
ガーリックの香りってお腹がグーっとなりますよね。なにを入れても美味しくなりそうです。
「ニンニクは備蓄していると何かと役にたつんだな。」
「そうなのです。ここでスライスした魚肉ソーセージを入れて焼きます。炒めると焼くの違いわかりますか?」
「はあ?考えたこともない・・・。そういわれるとどっちも焼く・・・わけだし。
なんだ?フライパンと中華鍋の違いか?」
「焼くときは具材をいじらないことです。焦げ目がついて美味しくなるには一定の時間が必要です。ついついいじりたくなるけど我慢するのです。ジュワーじゅーじゅーの音が弱くなってピチピチが加わりだすと焼け具合を確かめるタイミングです。」
「音かよ・・・そんな経験値はないぞ。でも聞いてみるか。」
じゅわーじゅーじゅー
じゅわーじゅわー
ぴち じゅわー ぴちぴち
「聞こえました?」
「ん~~なんとなく。」
「じゃあ見てみましょう。」
ひっくりかえすといい具合に焼けています!ソーセージの表面が生の時とあきらかに違っているし、むわっと膨らんでいるのがいい。この焼く工程でソーセージのモチもちモフもふ感がUPして食感が抜群によくなります。
「ひっくり返して同じように焼きますね。焼きあがったら皿に移します。」
「え?これで終わり?」
「いえ、空になったフライパンにケッチャップ入れます。」
ジュワアアアア
「ケチャップに焼きを入れるとグッと味が良くなります。赤い色がオレンジっぽい茶色に変わりますから、それがいい感じの合図。」
「キイ、それってどうなんだ?さっきのソーセージをいれっぱでも同じだろう?」
「全然違うのです。焼いたケチャップにいい具合に焼けたソーセージを入れたい。なぜなら断然こっちのほうが美味しいからです。同じ材料使って美味しさが変わるなら絶対美味しい方法をとるべきです。なんでも簡単、時短にしたらいいって事じゃないのです。ちょっと偉そうなこといいますけど、料理は愛情って言うじゃないですか。」
「あ~まあ、よく聞くよな。」
「食べる相手に美味しいと思ってもらいたい、だから一手間を掛ける。一手間を惜しまないってことだと思います。愛情があるから、その一手間を面倒くさがらない。それが愛情を込めるってことになる。ヒロさんって人が美味しいって言うほうがいいでしょ?ギイさんの面倒が減るより断然「美味しい」のほうが嬉しいはず。」
ギイさんはヤレヤレといった具合で僕の肩をポンポン。
「いちいち正論。反論の余地なしだな。一手間を惜しまず面倒くさがるな・・・か。今日から俺の座右の銘にしようかな。」
「大げさですよ~。」
モフモフのソーセージとソースに変化したケチャップが絡まりいい香りがする。これ簡単だけど本当に美味しい。
「これにオレガノいれてもいいですよ。でも全部オレガノになっちゃうから今日はナシにします。」
「お湯沸いたぞ。」
「じゃあ、塩いれてください。ギイさんの手でひとつかみぐらいいれて大丈夫です。」
「まじか・・・そんなにいれるわけ?」
ギイさんは僕が嘘を言っていると確信しているような顔で、おそるおそる塩を入れた。スプーンでかきまぜてから味をみる。ばっちりです。
「お吸い物だとしょっぱいでしょ、飲めなくはないけど。というのが塩加減です、味見してください。」
「おう。けっこうしょっぱいな。」
「でもこれが大事です。パスタのゆで時間は袋に書いてある表示からマイナス1分です。パスタいれてください。ここから一気にソースつくりますよ。」
オリーブオイルとニンニク。香りがでるまで火をとおしたらツナ缶投入。そして市販のトマトソースのレトルトをいれます。手作りトマトソースがいいのですが、ギイさんにそこから教えたら日が暮れてしまいますからね。
そして味付けは塩。イタリアではコショウをあまり使わないらしいです。肉系ソースは使うみたいですが。
「やはりここでもオレガノ登場です。ツナのトマトソースパスタは「トンノ」と言います。」
「トンノ?」
「イタリア語でマグロはトンノです。これはトマトソースなので、「トンノロッソ」で~す。」
「なあ、それ自分で勉強したのか?」
「ミネさんが料理しながらする話を聞いていたら自然に覚えちゃいました。」
「すげ~な。」
「タイミングばっちりですね!茹であがりとともにソースにパスタいれたら出来上がり~~。」
ギイさんは皿を持ってきてなんとか盛り付けた。菜箸でパスタは難しいです。トング買ってください。
二人で皿をテーブルに運んで準備完了。ギイさんはビールを持ってきてくれた。休みの朝ビールは最高だぞと言って。
「あれ?ギイさん月曜なのにお休みですか?」
「今頃気が付いたか。代休だよ、代休。クリスマスのリベンジだ。浮かれクリスマスを過ごした同僚に変わって働いたから、年度明けの月曜日に休む権利はあるんだよ。旨そうな匂いがしてるな、いただきます。」
ブルスケッタとソーセージ、トンノは大成功です。
「全部トマトになってしまいましたね。」
「いや、色々な食材に手をだせるレベルじゃないから助かる。それにオレガノ?そのハーブ一瓶買って消費できる自信がなかったけど、この3つで使えるとなると俄然できる気がしてきた。」
モグモグしながらギイさんはしばし何か考えたり、二ヤっとしたり色々な表情を見せてくれた。これを作ってだしたときの相手の反応を想像しているのかな。工程のおさらいかな。
でも人の役に立ったみたいで、僕も嬉しい。
「キイ・・・お前、そのミネっていうシェフのこと好きだろ。」
「なっ!」
「ミネさん、ミネさん言ってるときの顔キラキラしてるもんな~。そんな顔で見られ続けたら絆されて好きになってくれるかもよ?とはいえ、あれバリバリのノンケだろ。」
「・・・です。」
「前途多難だな。」
「ええ・・まあ。でも毎日おはようから始まってコーヒー飲んで、お店に行って帰ってくる。一緒の時間がたくさんあるから、それを大事にすることにしたんです。うまくいくとかいかないとか、そういうことを考えるのは止めました。」
「そっか・・・。あ?あああ~~?!
おはようでコーヒー?同棲してるのか?セフレ同棲?キイ!まじか!」
「マジか!ってなんですか。寮がわりに同居させてもらっているだけです!同棲なんて色っぽい事みじんもありませんから!もおお~何を言いだすんですか!」
「あ、そうなの?とはいえ・・・なんかそれもちょっと切ないな。」
「だからもう、そういうこと考えるのやめたんです。意味がないから。ギイさんこそヒロさんとはちゃんと付き合っているのですか?それとも好きなだけ?」
「聞き流せって言っただろうが・・・。」
「今更です。」
ギイさんはグビっとビールを呷って、仕方なさそうに言った。
「ちゃんと付き合ってるよ、遊びもやめた。真剣に考えているし、他の男はもういらない。とっかえひっかえの時は何も考えてなかったし、ちゃんと付き合うほうが面倒だって思ってた。
でも・・・今のほうが楽なんだよ。なんでだろうな。」
ギイさんはやっぱり照れくさいのか、パスタを猛然とかきこみ始めた。やっぱりそれも何だか可愛くて、僕まで気持ちがフワフワした。
「ギイさん、それはきっと・・・今は自分に嘘をついていないからです。だから楽ちんなんじゃないかな。」
ギイさんはパスタを食べるのをやめて僕の顔をまじまじと見た後、右手を伸ばしてきた。そして僕の頭をガシガシとグシャグシャにしたのです。僕はどうしてこう色々な人にグシャグシャにされるのですか!
「キイ!お前すごいな!めちゃめちゃスッキリした。キイと恋バナするなんて考えたこともなかったけど、お前最高だな!まじか!」
嬉しそうに笑っているギイさんを見ていたら、クヨクヨしたりする自分がバカみたいに思えました。
誰かのために出来ない料理を頑張ろうとするギイさんの一生懸命さは僕に勇気をくれたんです。
ミネさんは今頃何をしているだろう。
今日の晩御飯・・・僕がつくってみようかな。
・・・喜んでくれるかな。
もちろん僕の愛情たっぷりで!!
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