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九輪
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「また、だ。またキミからノバラの匂いがする。ノバラの…」
「…」
「生きているのか?ノバラをどこに隠した!」
「…随分、気が触れたんだね。晃。」
「間宮…冗談でも、ボクはキミを殺してしまいそうだよ」
「そうだ、君はいつだってそう。自分の思い通りにいかないとすぐに消そうとする。」
この独特な話し方をどうしてキミが知っているんだ間宮、どうしてボクとノバラの言葉をキミが話すんだ、間宮。その目はなんだ、哀れむような、蔑むような、その目、その目は
「ノバラみたいな顔しないでくれないか!」
気分が悪い、吐きそうだ、カラダがうまく動かない。
「だって仕方ないじゃないか、僕がノバラなのだから」
何を言ってるんだコイツは。キミがノバラのわけがないだろう。ノバラはもっと線が細くて、綺麗で、白くて、って、あれ、ボクはノバラのなにを覚えているというんだ、死に際のあの微笑みしか、ボクの記憶にノバラはいない。どうして、そうだ、可笑しいじゃないか、どうしてボクは、ノバラの、死の直前の顔など覚えているんだ。
どろり、血の流れる感覚が蘇る。暖かいカラダをボクは切り刻んだ、ノバラのカラダを、このボクが!
「あ、ぁぁあ!あ、あ、!あ!」
頭が割れそうに痛い、思い出したくない、あの日、そうだ、あの日、ボクは、ボクは、ノバラの描くつつじの花が、あまりにも美しくて、美しくて、それを力一杯描いてるノバラが美しくて、疎ましくなったのだ。とても、突然、ノバラの才能が煩わしくなったのだ。
神童、そうやって持て囃されてる男が、陳腐で凡人なボクの作品になったら、どれほど美しいことか。
そんな理由で、殺した。
ボクは親友を殺した。
「やっと、思い出したかい」
「ど、して…」
「あぁ、僕が恐ろしいだろう?安心していいさ、僕は作品を完成させたい、それだけなんだから」
「……間宮に、取り憑いているのか」
「どうだっていいだろう?そんなにこの男が大事かい?」
「…分からない」
「何故?君は僕だけを見ていればいい。…一人じゃ死ねもできない、君なんかね」
つ、とボクの手首の傷痕をなぞるノバラ。本当にノバラが、いるのか。ボクが殺したノバラが、
「どうしてこんな傷をつけるぐらいなら、動脈までえぐり取らなかったの?あの時僕にやったみたいに」
ぐち、と傷口に爪をたてられる、痛い、じくじくと、痛む、痛い、痛い
「臆病者。」
そういって妖艶に微笑んだ。あの時と同じ笑みだ。ボクはただ恐ろしいモノを見る目でノバラをみつめる。姿は間宮だが、ノバラだ。この雰囲気、この匂い、俺はノバラを尊敬していた、憧れていた、すきだった!だから忘れるはずもない!
故に、憎かったのだ。
ぐさり、と自分の腹に突き刺さったナイフ。ボクは「え、」とだけ、ろくな反応も出来ずに凶器を体内に迎え入れた。途端、口から血が溢れる、がたがたと痙攣するカラダ、あ、あ、殺されるのか、これはノバラの復讐なのか。
血がどくどくと流れ出すのを激痛に耐えながら見つめていた。
「野薔薇のような色だね。ここにつつじを飾れば完璧さ。」
ばさばさばさっ、とつつじの花が身体中に降り注いでくる。甘い匂い、ノバラの匂い、おえっ、と吐血すると、ノバラは微笑った。
「来世で会いましょう?」
ボクの身体からナイフを抜きとり、躊躇なく間宮の首を斬り裂いたノバラは、ゆっくりとボクに重なるように倒れこんできた。
まるで次は殺さないでね、とでも言っているようだ。
さむい、さむい、血が止まらない、こんな結末なんて、ボクがキミを殺さなければ、今頃ボクたちは、
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