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着信
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僕は、一人になり、鉛のように重い身体を、のろのろと持ち上げた。
外は暗くなっていた。
お腹がすいているのはわかったが、食欲はなかった。
身体中に体液がこびりついていた。
シャワーを浴びる気力もないが、一刻も早く忌まわしい痕跡を洗い流したかった。
お湯は、しばらく出なかった。
熱くなったり冷たくなったり不安定だった。
頭から浴びるシャワーが、頬をつたい、まるで涙のようだった。
泣くことのできない僕の代わりの雨の、雨だれの音のように、浴室に滴り落ちる水の音を聞いた。
長時間のシャワーの後、僕はバスルームを出た。
バスタオルにくるまったまま、倒れたくなり、不自然な姿勢で、床に倒れてみた。
タスケテクダサイ。
ぴくっ、ぴくっと時折身体を痙攣させてみた。
ダレカタスケテクダサイ。
そして急に叫び出したくなった。
「わあーっ!」
僕は起き上がって叫んだ。
「いやだ、違う」
頭を抱えて床を芋虫のように這った。
携帯がテーブルの上で跳ね上がった。
ブルブル振動しながら、這いずり回っていた。
僕もびくんびくん腰を動かした。
ぜえぜえ肩で息をして、ふと事態に気づいた。
手をのばして、椅子の脚をつかんだ。
ガン、とテーブルにぶつけ、携帯を落とした。
ガツンと、床に落ちたそれは青い光を放ちながらくるくるまわり止まった。
「死んだか」
僕はつぶやいて、手でつかんだ。
着信記録が点滅していた。
弓弦さんだった。
急いでかけ直したが、もう通じなかった。
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