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秋/電話後
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竹春は、桐生と会う約束を取り付けた。
電話を切った後も、竹春の胸の鼓動はおさまらなかった。
電話してしまった、ついに。
ファミレスで桐生と調教美少年を見かけて以来、ずっと気になっていて、矢も盾もたまらなくなってしまったのだ、と正直に告げた。
「まさか、それで電話を?」
と彼は驚いていた。
それは、そうだろう。
そんなことで?
と。
街で見かけたくらいで、わざわざ電話を?
そんなことで用もないのに、わざわざ教え子に電話をかける……変態、セクハラ、パワハラ。
そんなことくらいで電話をしてきたんですか?
桐生の言葉が非難に感じられた。
それで、答えられなかった。
嫌がられているのかもしれない。
あんな可愛い恋人がいるのに、わざわざ中年男に会いたくもないだろう。
今や、あの子が彼の理解者なのだ。
まだ若い少年だ。付き合いはじめて間もないのだろう。
きっと一番楽しい時期。
自分などはお呼びでない。
邪魔だ。
彼らの限られた、共に過ごせる楽しい時間を邪魔する……そうか、当て馬にされるのかもしれない。
あんなに快く承諾されるとは思ってもいなかった。
てっきり、断られるものと。
つまり、当て馬なのだ。
それなら合点がいく。
あの少年に嫉妬させてやるのだろう。
それならそれでいいじゃないか。
竹春は、半ばやけっぱちな気分だった。
もとより、あの青年とどうこうなれるわけではないのだ。
とまで投げやりに思った。
もちろん、そんなことが目的ではない。
どうこうなど。
そんなことではなかった。
けれど、やはり気になってしまう。
考えずにはおれない。
いやいや向こうは、全く考えていないに決まっている。
自分だって学内にいる時は、そんなことなど考えていなかった。
もちろんだ。
もちろんじゃないか。
そんなことを考えていたら、仕事にならない。
毎年、たくさんの若者と出会うのだ。
竹春は、檻の中の獅子のように、ぐるぐる部屋の中を歩き回った。
自分から電話したのだ。
おかしいではないか。
学生に電話するなど。
もう卒業したとはいえ、学生に個人的な電話をかけるなど。
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