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知られたくない6
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「誰に嫌われても、陰口叩かれてもどーでもよかった。良かったのに
仁は、栗橋のみんなは、違くて。
ち、がうから…怖かったんだ。」
こんなにいい人がいるなんて思わなかった。
俺なんてまったくの他人に、優しくする人がいるなんて思わなかったんだ。
俺は、仁も、栗橋のみんなも好き。
好きだから、嫌われたくない
「怖い!迷惑かけたくないっ!!
でも、俺なんて汚いから、醜いから、性格悪いから、だから…だから…嫌われる!!」
目からまた熱いものが出てくる。
抑えられない
「春斗、こっち向いて」
仁は俺の頬を両手で挟むと
そのまま目を合わせられる
優しい瞳
もう、怒ってない目
「春斗は汚くも醜くもないよ。」
優しい体温、優しい顔
「う、嘘だっ!だって俺は父さんと…」
「醜くない。言ったろ?お前は綺麗だ。」
綺麗?
仁は最初会った時もそう言ってた
「なんで、綺麗って言われてるか分からない?短い期間しかお互い知らないけど、お前が一生懸命で、頑張ろうとしてることを知ってるから。前向きで、真剣な子を、どうして醜いなんて思う?」
「それは、ただ迷惑をかけたくなくて…」
仁は微笑んで頬を撫でる
涙の跡を消してくれるように
「ほら、そうやって周りの事を考えてくれる。俺たちに気を使ってくれてる。」
仁はなんでもそう。
良い方に言葉をすり替えてくれる
「気を使って生きる事って凄く疲れるだろ。だからやめてしまう人もいるんだ。
それなのに春斗は、偉いよ。」
でも
と仁は続けた
「春斗はもっと迷惑をかけてもいいんだよ。頼っていいんだ。側にいて、頼られないのは、1番…寂しい。俺たちは春斗に何もしてあげられないのかって、辛くなる。」
「辛い…俺のせいで辛くなるの?俺なんかのせいで?」
分からない。
どうして?
「みんな春斗が好きだからだよ」
「…そ、んな」
「春斗が頑張ろうとしてるのを知って、好きになったんだよ。だから、春斗が無理してたり辛い思いをしてたら、俺たちも辛いし、助けになりたいって思うんだよ」
俺は自分が嫌いだ。
でも、俺が好きな人達は、俺を好きでいてくれてるの?
「そう思うのは、迷惑か?」
首を横に振る。
迷惑なんて、そんなはず無い。
「俺たちに辛い思いをさせたいか?」
「やだ。そんなの、やだ!」
「なら、もっと俺を頼って。分かった?」
叱ってるくせに、優しくて
怒ってるのは怖いけど、結局甘くて
「俺なんて、なんて言うな。春斗は自分を低めるけど、それは俺たちに失礼だ。
俺たちが好きな春斗を、バカにするな。
わかったな?」
有無を言わせない、その言葉に俺はうなづくしかない。
「仁、ごめ、んなさい…ごめんなさい」
涙が、止まらない
好きでいてくれてるなんて、思わなかったから
自分を低く見ることが、悪いことなんて思わなかったから
「自信持って、胸張って生きろ。お前は悪くない。醜くない、汚くなんてない。
父親が怖いなら…俺がお前を守るから」
真剣な眼差しに捕らえられていく
心の中にあるものを、射られたみたいだ
すごく嬉しい
仁が守ってくれる、そばにいてくれる
仁が見てくれるだけで言葉をくれるだけで
勇気が湧いてくる、元気になる
もっと頑張れてしまう。
そして同時に
何をしても仁のそばにいたい
そんな独占欲がどんどん育っていく
仁の優しい腕の中で、俺は今ある感情を見て見ぬふりをした。
それが特別なものだと分かっていたけれど
それを考え込むほど、余裕なんてなかったから
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