アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
近づく距離、阻む手
-
◇◇◇◇
「持ってるデータこれで全部?」
「チッ、あぁ! てめぇのせいで俺は明日食う金もねーんだよ!」
「金ならやるから心配しないでいいよ」
「はぁっ?!」
「僕に貰おうが、この写真売って稼ごうがどちらにしろ汚い金に変わりないでしょ」
「てめぇ……」
「暴力もいいけどさ、もう少しココ使おうよ。 ね? おバカさん」
「〜〜っ!?」
今にも掴みかかって来そうなほど
頭に血が上った男が僕を睨みつけている
だけど睨むだけ
こいつは僕に一切の手出しは出来ない
本能で僕を恐がってるから
本能が拒絶してるから
人間も動物だからね
自分よりも上だって頭で考えなくても察知できるようになってる
平等だ対等だどうのこうの言うけど
そんな事を口にした人間の社会だって結局は権力者が上に立つ
力無い人は顎でこき使われて
能力や財力、人よりも長けている奴が結局は勝ち組の世界だ
「そこの鞄に金は入ってるから持っていきなよ」
「……」
「どうしたの? 要らないなら置いといてくれても構わないけど」
「うるせえっ! いつかてめぇのその素顔世間にしらしめてやるからな!」
「ご勝手に。 僕はこの業界にも世界にも特に未練なんて無いからね」
「ゲス野郎ッ」
「おあいこだよ」
汚い言葉を幼い子供のように投げつけてくる男が消えるのを笑顔を浮かべて見送ってやる
「……さてと、仕事しようかな」
男が消えた後、部屋に戻って渡された中身を取り出した
手に持つDVDを早速パソコンに読み込んで開くと可笑しくて思わず笑いが溢れた
「へー……天使直輝と祥さんって付き合ってたんだ」
マウスでページをスクロールしていくと
そこにはあちらこちらで祥さんと天使直輝がキスをしていたり抱き合っていたりホテルから出てくる写真が載っている
それもハッキリと顔の写ってるものから変装しているものまで
おまけに互いの家から出てくる写真もあるし
なにこれ……体育祭?
よく分からないけどとにかく365日を記録したみたいに膨大な数の写真
芸能界っていつどこで誰に見られてるかわからないものなんだよ
ましてや天使直輝みたいに大型モデルなんてあちこちのやつが叩きたくて仕方ないんだから
「馬鹿だな〜」
祥さんも幸せそうな顔しちゃって
本当に馬鹿だよね
幸せなんてもんそう長くは続かないのにさ
調べてみたけど現にあの二人は今別れてるみたいだし
そのせいでなのか天使直輝はニューヨークの大学に入ってる
こっちに戻ってきた理由は知らないけど
今更何の用なのか
大学には長期休暇を取ってるらしい
「どっちにしろコイツ邪魔」
一人呟いた指の先で天使直輝の顔が映るディスプレイを弾く
折角時間かけて祥さんに近づいていたのに
今更戻ってこられてもいい迷惑だ
この写真は十分にネタになるし
祥さんのことだから天使直輝だしに使って脅せば僕のやりたい様には出来る
けど、それじゃあつまらない
欲しいものはかならず手にしなきゃ納得しない性分だからその為に手段なんて選ばない
可哀想とか残酷とか
そんなこと知った事か
好きな人の泣き顔ほど綺麗なものなんてない
幸せなんて生温いものよりも
痛みを植え付けた方が心の中にずっと記憶される
僕がおかしくて世界が正しいのか
それともその逆なのかなんて事はどうでもいい
僕は僕の世界を生きてるし
僕の好きなように生きる
誰に指図されることも嫌いだし
欲しいものを手にできないのはもっと嫌いだ
例えそれが祥さんにとって不幸でも
泣かせることになっても僕にとっては幸福だから構わない
「……」
頭の中で繰り返されるこれからの予定を組み直しながらマネージャーに電話をかける
数コールめに繋がった電話を耳に当てると静かに口を開いた
「もしもしマネージャー? 夜遅くにごめんなさい」
「ううん、大丈夫! それより何かあったか結葵君?」
「マネージャーに頼みたいことがあって」
そう、どんなやり方でも
欲しいものは必ず手にする
「僕の専属ヘアメイクアーティストの件覚えてる?」
「ああ! 覚えてるよ」
「それ、小日向 祥って人に頼みたいんだ」
「あー……怜さんのところの」
「うん。 最近一人でも仕事してるみたいだし、僕も祥さんなら緊張しなくて済むから」
「そっかー……うーん。 でも、本当にその人でいいのか?」
「うん。 いや、その人じゃなきゃ嫌だな」
「分かった! そんなに言うならとりあえず一ヶ月の間は彼に頼もう」
「ありがとうマネージャー」
「いいんだよ。 いつも結葵君には力になってもらってるしね」
「僕こそ……マネージャーが僕のそばに居てくれて本当に嬉しい」
「あははっ! 何か恥ずかしいな! じゃあ早速手配は進めとくからあまり夜ふかしはするなよ」
「はい、お休みなさい」
ぷつり、と切れた電話を片手にベットへと倒れ込む
明日が楽しみだ
新しいゲームが届く時のような高揚感
祥さんは一体どんな顔するだろうか
泣く? 困惑する? 絶望する?
それとも僕を怨むかな
早く祥さんに触れたい
僕だけのものにしたい
飽きたら捨てればいいし
気に入ったら壊れるまで手元に置いておけばいい
「ふっ、愉しみだよ本当」
漸く実りそうな計画に
その晩は気分が高まってなかなか寝付くことが出来なかった
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
263 / 507