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おやすみとおはよう
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「わーっ! えー、ねえ直輝! 部屋すっごい可愛いよ?!」
「小学生かよ」
「っ、成人してますっ!」
「知ってます」
「〜〜っ!」
部屋の扉を開けたら、遊園地に負けず劣らずの内装に心が弾む。
今居るのは遊園地が経営しているホテルで、目の前にお城が見えちゃうような凄いワクワクする部屋。
そこに何で居るのかって、もう帰ろうとなった時にホテルを予約していたと聞かされた。
喜ばせたくて、秘密にしていたらしい。そんなの嬉しいに決まってる。もう本当困った。幸せ過ぎて、顔が緩みっぱなしだ。
「直輝、直輝! ここの窓ムッキーになってる!」
「はいはい」
「こっちはムニー!」
「良くそんな元気あるな。 俺はもう眠いんだけど」
「ジジくさい……」
「なんか言った? 小学生君」
「だから成人してるから!」
「うん、だから?」
「〜〜っむかつく……」
あちこち部屋を見て回る俺とは正反対に直輝はベットへと寝転んで頬杖付いて馬鹿にして嘲笑ってくる。
せっかく泊まってこんなに綺麗で広い部屋に目もくれない所は直輝らしい。
元々こういうの興味無いしね……むしろここまで付き合ってくれる事に奇跡だとさえ思う程。
「……」
「どうした?」
「ううん」
「なに、つまんなくなったの?」
「……違うよ」
つまんないわけじゃないけど、ただ、1人で部屋を見たって寂しいだけだ。
直輝と一緒に居たいから、ちょっとでも離れてるのが惜しい。
とは素直に言える訳がなくて、俺も直輝の隣に腰を下ろすと直輝のお腹を枕にして寝転んだ。
「甘えんぼ〜」
「違うのっ、直輝が甘えたいかなって思ったの」
「ふーん?」
「っ、なんだよバカ直輝」
「そこ遠くない? 祥が来たいなら腕枕してやろうかなって」
「腕枕……?」
「する?」
「す……っ、し、しない」
「ふふっ、天邪鬼は大変だな〜」
「別にそうじゃないし、ッ、天邪鬼でもないし」
「あっそ」
すんなりと終わったいつもと変わらない口喧嘩に物足りなさを感じて見上げれば、直輝の瞳は瞼によって閉ざされていた。
「……直輝、眠いの?」
「ん」
「寝ちゃうの? まだ23時だよ」
「……んー、朝早かったし……眠い」
「……」
それは多分俺のせいだ……。
朝早くに起きてから二度寝出来ないまま直輝迄起こしちゃって困らせてしまったから。
長い時間を飛行機に乗って帰ってきた直輝は疲れていたはずなのに、嫌な顔一つしないで朝から俺の我侭に付き合ってくれていた。
しかもそのままこんなに人が多くて騒がしい遊園地に来てくれて、静かな所を好む直輝は俺よりもうんと疲れてるんだろうな。
でもやっぱりまだ起きていて欲しくて寝ない様に体を揺らしても、お腹を叩いても、うんともすんとも言わないから段々と寂しさが大きくなる。
「直輝、起きてよ」
「……」
「……直輝ほんとに寝ちゃうの?」
むくりと起き上がって、直輝の頭の方に移動する。サラサラな白髪を撫でながら問いかけても聞こえてくるのは規則正しい寝息のみ。
「……寝たら出来ないよ」
形のいい耳を指でなぞって、ピアスをカリカリと弄る。
眠りを邪魔されるのが嫌なのかぐっすりと寝ちゃった直輝が少しだけ不満そうに体を捩った。
「……起きてー……直輝のしたい事何でもするから……」
「……」
「……分かんないけど、多分……いや、うん……しちゃうかな、でも恥ずかしいし……」
一人でブツブツ言って段々と虚しくなってきた。もしかしたら起きてくれるかもなんて思ったけど、直輝は一度寝るとなかなか起きてこない。眠りが深いから地震が起きても絶対寝てるタイプだ。
「……エッチしたかったなぁ」
ぽろりと漏れた本音に自分でギョッとした。
いやいやエッチって俺何言ってるんだろ……なんだかこれじゃあ本当ずっとやらしい事しか考えてないみたいだ。
実際考えてないって言ったら嘘になるけど、でも、2日しか居ないって直輝が言ってたからまた離れちゃう前にもっと直輝に触れ合っていたい。
キスも、沢山したい。
だからって眠ってる直輝を起こして襲う程肉食では無くて、今日は俺も大人しく眠ろうと背を向けようとした時伸びてきた手のひらに後頭部を押された。
「ッ?!」
「エッチしたかったんだ?」
「〜〜ッ、な……なん、で……っ!」
「それで俺のしたい事何でもしてくれんの?」
「いっ、言ってな……ッ、」
「ふーん? じゃあもう一回寝ようかな」
「あ……ッ、やだ……寝ないで……?」
「……ふっ、それは祥次第だな」
「っ、うー」
さわさわと髪を撫でられて、毛先を指に絡めて直輝が弄ぶ。翻弄する様な瞳で見上げてきて、顔にかかった前髪を直輝が左耳にかけ直してくれて、俺がさっきしたみたいにピアスをカリカリと弄られてくすぐったさに身を捩る。
「な、お……くすぐったい」
「んー」
「耳……ダメ……」
「ふふっ、これ俺があげたやつだね」
「ッん……う、ん、そうだよ」
シンプルで控えめに輝くシルバーのピアスはクリスマスの日直輝から貰ったプレゼントだ。
あの時間から止まったままの俺達と同じで一度も身につけてあげられなかったから、今日は付けてきた。
大切な日に大切な人からの思い出のプレゼントを身につけて、それに気付いてもらえるのは少し胸がくすぐったい。
「似合うよ」
「……ありがとう」
ふっ、と微笑む直輝が綺麗で赤くなった顔を隠すように俯く。
寝ていた体を起こした直輝に頭を引かれてキスをされるのかと思ったらおデコに唇が触れた。
「っ、え……?」
「お預けね」
「なおーー」
口にしてと縋るよりも先、直輝が耳元で囁いては何事もない顔をしてベッドを下りて消えて行く。
やがて聞こえてきたシャワーの音に心臓がバクバクと破裂しそうな程高まって、俺は布団に顔を埋めるとバタバタと足をばたつかせて悶えた。
ーー『口にするのは後でね、またキスだけでイかせて上げるから大人しく待ってるんだよ』
囁かれた色っぽい吐息と声が耳に残って消えない。
あんなこと言うなんて意地悪だ……。
その気にさせて放置するなんて俺が困るの分かってて知っててやってるに違いない。
色っぽい声で囁かれたせいで頭の奥がジワジワ痺れている。
胸の奥がドクドクして一瞬で興奮してるのなんか嫌でも分かった。
早く、触れて欲しいし、触れたい。
"また"、なんて意地悪言う直輝に馬鹿みたいにドキドキして、期待してる。
好きな人と繋がる事の喜びが胸を染めて、早く早くと直輝を待った。
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