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酔っ払いと意地っ張り
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あー、鼻の奥がツンとする。
心がどこかに行ってしまうのは嘘じゃない。
直輝と別れた三年間、心だけが置いてけぼりだった。綺麗な景色を見るのが苦しかった。笑うことが億劫だった。
隣に一番に綺麗な景色を見せて、綻ぶ笑顔を向けてくれる直輝が居ないから。
大好きだった世界が、苦しかった。
「……もう、要らない」
「祥」
ポツリ、零れた声。
こんなに弱々しい声出たんだ俺、なんて思った時不意に顎を掬われる。
壁と挟むように目の前には直輝が居て、俺の顎を掬い上げてる腕とは反対の手は壁についていた。
あう……横は壁だし、反対側は直輝の腕だし……困った、逃げられない……
「うー……怖い話いや……」
「祥、キスして欲しい?」
「へ?!」
変な声が出た。
キ、ス?
直輝は俺に今、「キス」って言ったの?聞き間違いじゃなくて?
「俺にキスして欲しいの?」
「うん……! しれ欲しい! 沢山沢山しれ欲しい!」
「ふっ、後悔するなよ」
「し──」
ないよ、そう続けようとした唇は意地悪に目を細めた直輝の口で塞がれる。
顔を上に向かされて降り注ぐ様なキスに膝を抱える腕が痺れる。
いつの間にか直輝の両手は俺の髪に指を絡めて包み込む様に頭を引き寄せていた。
「ンッ、ふ……ぁ、ん、く」
「は、……ん」
くちゅ、くちゅ、て耳を塞がれると音が頭に反響して脳みそがイケナイ毒でも盛られたように痺れて、ゆらゆら心地よかった体はもっと気持ちいい。
流し込まれる直輝の唾液を舌先絡めて必死に飲み込むと、褒めるように耳の裏を撫でられて腰がじゅんっと痺れた。
もっと、もっと。欲しい。もっと。熱に溺れたい。
「ふぁっ、ァ、なお……っんぅ」
崩された体制、ズルズルと壁に背を預けた体は下へと滑り落ちていく。
いつの間にか俺の上に乗り上げた直輝が真上に居て、中途半端に壁に寄り掛かったままの首が、肩甲骨が、痛い。
でもこのままずっとこうしていたい。
「なおっ、なお……っ、も、ろ……は、んぅ」
「もう皆に言い訳出来ないな」
「いいわけ、要らない……っちゅう、もっと、して」
言い訳?何に?誰に、するの?
グラグラ揺れる頭は直輝の言葉に追いつかない。考えたくても揺れる世界には敵わない。
もっとしっかり頭を働かせなきゃとは思うのにもういっかて気持ちが退いてくれない。
でも開いた視界には、嬉しそうに笑う直輝が居たから、何でもいい。
「なお、なお……ちゅー、ちゅう、してぇ」
「あ、おい」
「ふふっ、しゅきらよっ、なお好き、沢山好き。 俺のなお、らい好きっ」
グリグリ直輝の首筋に顔を埋めてドターンて押し倒す。
驚いてる直輝のほっぺたを包むとチュッチュて沢山キスした。
切れ長のパッチリ二重瞼にも、スッと筋の通った高い鼻にも、男らしく引き締まった頬にも、薄く色っぽい唇にも。
ハスキーで甘い声を出すこの喉仏にも。サラサラ輝く月のような髪にも。
雄の色香を放つ直輝の全てに口付けしたい。
沢山俺で埋まればいい。直輝も俺と同じくらい、溺れちゃえばいいのに。
吸い上げて噛み付いて、慰めて、傷つける。
直輝の肌に俺の印を残すと恍惚に顔が染まった。
「はう……なお、好きぃ」
「……ほんと、お手上げだわこりゃ」
尻尾を振り回して思う存分じゃれては直輝を舐め尽くして、俺が満足した頃には直輝の肌には至る所に鬱血と噛み跡が残っていた。
「満足した?」
「うん、でも、まだらめらよ」
「まだキスするの?」
「ううん、エッチするんらよ」
「ん?!」
「エッチ、沢山エッチするまで、ダメ。 動いたら、メ!」
「おい、こら! 脱ぐな!」
「脱がなきゃエッチれきないもん〜!」
「家に帰る迄我慢しろっ」
「やら〜! 今してくれなきゃ別れうッ!」
「あっ、祥──」
困った直輝可愛い。怒った直輝は怖い。泣いた直輝は苦しくも綺麗。照れた直輝は愛おしい。笑顔の直輝は俺の宝物。
どんな直輝もどんな時も俺の大好きな直輝。大切な恋人。
「直輝、好きぃ」
「俺もだよ。 だからここで脱ぐな!」
「やら〜ッ」
ドターン、バターン、ズボンを脱ごうとする俺とそれを止める直輝。攻防戦はこの後もしばらく続いた。
その後起きた直輝と俺の大乱闘については後日、正気に戻った俺が深々と皆に謝りに出向いた。
大丈夫、可愛いかったよ、と訳の分からない慰め方をされ「キス魔だったとはね。 だからお酒飲まなかったんだな」なんて知らない間に造られた瑞生さんの、フォローに救われるのはすぐ近くの未来の話だった。
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