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【後日談】一夜の夢、一生の誓い …42
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部屋に行くためにエレベーターに乗り込むと、俺たちの後から白髪の老夫婦がやって来た。
お爺さんがお婆さんの手を引いて乗り込もうとするのを、「開く」ボタンを押して待つ。
誰かと一緒になるのは(こんな格好だし)緊張するけど、かと言って無視して扉を閉めるような事は出来ない…
二人が乗り込むとお婆さんが俺を見て「ありがとう」とニコリと笑ってくれた。
「いえ」と、俯きがちに小さく返す。
それにしても、仲が良さそうな夫婦だなぁ。
お爺さんが押した行き先階は、俺たちの一つ下。
エレベーターの扉が閉まると、お婆さんが俺たちが繋いでいる手に視線を向けた。
恥ずかしくて、ちょっとドキッとする。
お婆さんは俺を見て優しく微笑んで、それと同じく優しそうな声で話しかけて来た。
「東京タワーのライトダウン、知ってる?見るの?」
え?
ライトダウン?
何のことだろうと俺が首を傾げると、雅治さんが代わりに返事をした。
「はい」
「ふふっ。私たちにもこんな若い頃があったわねぇ」
お爺さんはエレベーターのパネルをずっと見上げていて、お婆さんの問いかけには答えなかったけど、その手はしっかりとお婆さんの手を掴んでいて、胸がキュンとするような温かい気持ちになった。
エレベーターが、お爺さんの押した階に止まる。
扉の前に立ったお婆さんが、俺たちを振り返った。
「あなた達にも永遠の幸せが訪れますように。メリークリスマス」
そうして、二人は手を繋いだまま廊下に消えていった。
「「なんか…」」
ふと呟いた言葉が雅治さんと重なった。
「ふふっ。なあに?」
「いや、陸こそ」
「いや…なんか、あーゆーの良いなぁ、と思って。…雅治さんは?」
「うん。…俺も同じこと考えた」
歳を取ってもああやって手を繋げるのって、良いな。
しかもクリスマスにホテルに泊まるなんて。
俺の理想の形をそのまま見た気がして、ますます胸が熱くなる。
どちらからともなく手を深く握り直して、エレベーターを降りた。
部屋に付いてすぐ、雅治さんが窓際に立ったので、俺も一緒に外の景色を眺める。
「わあ!すごく良い景色だね!」
眼下には、キラキラと光る夜景と、東京タワーが見えた。
「そう言えば…さっきのお婆さんが言ってた、ライトダウンってなんだろう?」
雅治さんはあのお婆さんの質問にすぐ返事したけど、何のことか分かってるのかな?
「フッ…あぁ」
東京タワーに目をやったまま、何かを思い出したように雅治さんは笑った。
「えっ?何?」
「…何だろな」
「えぇー!!何それっ!教えてよー!」
「調べたら分かるよ」
「えーー」
雅治さんの意地悪っ!
気になるじゃん!
というわけで、スマホを取り出そうとバッグに手を伸ばす。
けど、バッグを開ける前にその手は雅治さんに掴まれた。
何?と上を向くと同時にキスが降って来た。
「…っ」
唇が離れたと思ったら、正面からギュッと抱きしめられて、再び唇を塞がれる。
「ん、んん」
雅治さん、いつもと様子が違う。
甘い。
甘いよ。
俺、愛されてるなって感じるような熱さ。
それに応えるように、雅治さんの背中に手を回した時だった。
「リリリリリ…」
「「!!」」
突然、部屋の電話が鳴って、ビクリと唇を離した。
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