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そう言えば、ホワイトデー …2
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「美味い」
チャーハンを一口食べた雅治さんが、フッと優しく笑った。
「良かったです。こんな物しか作れなくて、申し訳ないけど…」
「いや、十分だよ。すげー美味いし」
その後は、無言でチャーハンをかき込んだ。
あっと言う間に食べ終わった雅治さんが「美味かった。ごちそうさまでした」と手を合わせた。
「えっ?食べるの早い!」
でも、全部食べてくれた。
嬉しい!
「はは。なんか、夢中で食べちゃった」
そう言って、俺の後ろに座って、後ろから俺を抱きしめた。
「ちょっ…俺、食べづらいよっ?」
「いいから、気にせず食べて…」
「えー…」
雅治さんが、俺の後頭部にあごをつけながらこう言った。
「そう言えば。昨日さ、一緒に帰ろうかと思って、帰るタイミング聞いたのに…陸、俺のLINE無視して先に帰ったろ?俺、寂しかったよ?」
突然そんなことを言われたので、ドキッとした。
「あ、あれは…ごめんなさい。ちょっと考え事してたら、スマホ見るの忘れちゃって…家に帰ってから気付いて…」
そう、昨日は雅治さんが"一緒に帰ろう"ってLINEくれてたのに気付かずに、先に帰っちゃったんだよね。
「考え事って?」
「……」
もちろん、二宮課長さんのこと。
俺が雅治さんに特別な視線を向けてるのに、気付かれたこと。
…でもこれ、言ってもいいのかな?
雅治さんまで不安にさせて、雅治さんも態度が変になったら、二宮課長さんなら絶対に気付く。
だから、言わない方がいいんじゃないだろうか?
「えっと。仕事のこと考えてた。客先で作業するのって、やっぱり疲れるし…」
「…帰る前に…二宮課長に何か言われたとか?」
「えっ?」
なんでっ?
なんでそこで二宮課長さん?
「いや、昨日あの後、作業ルームの前で電話していたら、二宮課長が後から出てきたから…。陸のところに行ったのかな?って」
あぁ、そういうことか。
「あ、はい。二宮さん、来ました。…来週にはプログラムを1本にまとめて作業しようって」
「そうか。予定より早いな。……話はそれだけだった?」
「はい。納品、前倒しできるかな?って言われました」
「そうか…」
雅治さんが、頭にチュッとキスをした。
「で、…なんで敬語?」
「えっ?」
「今、敬語になってた」
「あっ、すみませ…あっ、ごめん!仕事の話だから、つい」
二宮課長さんの名前が出て、動揺しちゃったんだと思う。
どうか、バレませんように…
「ふーん」
あまり納得してない風の雅治さんに気付かないフリをして、残りのチャーハンをかき込む。
「ね?そう言えば…料理教室に行ってるのって、俺のため?」
「え?…っ!ゴホッ!」
突然、恥ずかしいことを聞かれて、思わずむせてしまった。
「あぁ、大丈夫?ほら、水」
雅治さんから渡された水を飲む。
今日の雅治さん、なかなか鋭い突っ込みをする。
いや、俺が分かりやすいだけ?
「はぁー」
水のグラスをテーブルに置くと、雅治さんが背中をさすってくれた。
「ごめん。…変なこと言ったかな」
雅治さんが、ちょっと寂しそうにそう言う。
「いや…あの…じ、自分磨きだよっ。雅治さんのジムと同じっ」
本当は、雅治さんのためだけど。
それを本人に言うのは、恥ずかしい。
「…他の人にも、料理振る舞う予定?」
「ま、雅治さん以外に作る予定はない…デス」
「…フッ。そっか」
後ろにいるから、どんな顔してるか分からないけど、雅治さんが嬉しそうにしてから、俺をギュッと抱きしめた。
雅治さんのその行動に、心がキュンと音を立てたけど、俺は恥ずかしすぎて反応することができなかった。
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