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「あいつに、どんな酷いことされた?」
ふと、動きを止めた雅治さんが、俺の目をじっと見る。
雅治さんを怒らせないような言い方がないかと考えたけど、そんなの思い浮かばない。
「えっ…と。み、右手を押さえつけられて…顎を掴まれた……。意外と力が強くて…逃げられなくて…ごめんなさい。でも、そこで、やめてくれたから…」
"ギリギリまで顔を近付けられた"という言葉は、喉のところで止まった。
それを言ったら、雅治さんは二宮課長さんを殴りに行ってしまいそうな気がしたから。
ただでさえ、言ってる途中で眉間にすごいシワが寄ったし。
雅治さんが俺の両手を掴んでドアに押し付けた。
「なんで、そんな状況になった?」
「っ!ごめん、なさっ!…その、二宮さんから、色々と相談を受けてて…それで…あの時も…」
雅治さんがふるふると頭を振った。
「あぁ、ごめん。待って。やっぱり話は後で聞く。今は俺のことだけ考えて?もう、あいつのことなんて考えるな。…俺だけ見てろ」
そう言って、噛み付くように俺の唇を貪った。
無我夢中に求め合うその口付けは、唇が痺れるほどに激しくて、キスがなんなのかよく分からなくなるほどだった。
雅治さんの機嫌とか様子とか…
色々気になるのに…
そのキスで頭が痺れて、何も考えられなくなってくる。
俺の中に入ってくる舌は、まるで生きているように動いて、俺の気持ちいいところを丁寧にくすぐって掻き乱していく。
気持ち良い……キモチ、イイ…
「ん、ん…ぅ」
「はっ…ん」
暗い室内に、口付けを交わす音と二人の吐息がいやらしく響く。
キスだけで感じ過ぎて膝がガクガクと震え出した時、雅治さんか俺を押さえつけていた手を外して、グイッと腰を引き寄せた。
雅治さん?
「良かった…陸が無事で……良かった」
そう、小さく呟いて、俺を掻き抱いた。
「!!」
雅治さんがどれだけ俺を心配していたのか…
その声の小ささと俺を抱きしめる力強さがそれを表しているようだった。
もしかして、飲み会に参加したかったのは、俺のため?
仕事を必死で終わらせて新幹線に飛び乗って帰って来てくれたのは、俺が心配かけてたから?
俺が思ってた以上に、雅治さんは、二宮課長さんのこと警戒してたってこと?
何も分かってなかったのは、俺だけ…
「心配かけて…ごめんなさい」
俺も雅治さんの背に手を回して、ギュッと抱きしめ返す。
雅治さんは何も言わずに、小さく頷いた。
胸がキュンと痛くなった。
「もう、誰にもどこも触れさせないから…俺が触れられたいのは、雅治さんだけだから…」
再び、雅治さんが頷いた。
「雅治さんの事しか見えなくして?もう二度と、あんな事にならないようにするから。
こんな俺だけど…全部、全部貰って?メチャクチャにして?雅治さんの事で、頭いっぱいにしたい、よ…」
なんかまた泣きたくなって、最後の声が震えてしまった。
すでに雅治さんとは密着してるけど、さらに押し付けるように俺の身体を雅治さんにすり寄せた。
「陸…」
苦しいくらいに、雅治さんが腕に力を込める。
「今の言葉、忘れんな?」
今度は、俺が頷いた。
「もう他の奴なんかに、簡単に心を許すな?」
うん。
うん。
もう、二度とこんな事にならないように誓う。
それを伝えたいのに、うまく言葉に出来なくて、ただ頷く事しかできなかった。
雅治さんが、ゆっくりと身体を離して、力強く唇を合わせた。
「陸の、全部、貰う」
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