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なな
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下校時。
まさと一緒にいつもの道を歩いてた。
そしたら、スーツ姿のおっさんが道の真ん中で倒れてた。
藤木「………」
須藤「………」
取り合えずそのおっさんを二人で担いで、公園まで連れていった。
藤木「まだ起きねーの?」
須藤「ん」
俺達は公園の水道でおっさんの頭に水をぶっかけてた。
何でなんの戸惑いも無くこんなことをしてるかと言うと、この人を高一の時から知ってるからだ。
一年前。
藤木「そんでさー叔母さんと凜が昨日から泊まってるんだけど、凜のやつタマコを脅かしまくるもんだからタマコが俺のベッドの下から出てこなくて…」
須藤「………」
藤木「おい、まさ?聞いてるのか」
須藤「…あれ、人?」
まさが指差した方を見ると、スーツ姿のおっさんが俯せになって倒れてた。
藤木「え、ちょ、マジかよ、死んでない?死んでないのか?」
須藤「落ち着け」
まさは冷静に脈を取った。
こういう時、まさがいて良かったと思う。
道で人が倒れてるのを見ると、嫌な予感しか頭を過らない。
藤木「…どうだ?」
須藤「生きてる。寝息も聞こえるし、寝てるだけだな」
なんだそりゃ。
さっきまでの俺の緊張を返せ。
須藤「倒れてるってだけでそこまで怖がるか?血が出てるわけじゃないし」
藤木「うっせ!血が出てようが出てまいがビックリするだろうが!」
まさは冷静に物事を見ることが出来るから平気なのかもしれないけど、俺には冷静でいられるのは無理だ。
藤木「寝てるだけなら心配無さそうだし、置いて帰ろうぜ」
須藤「いや、流石に放置はどうかと思うべや」
まさがおっさんを担ぎ、帰り道とは逆の方に向かった。
藤木「おい、どこに行くんだ?」
須藤「公園。頭に水を被せれば起きるかもしれんしょ」
先に帰ってていいぞ、と言われたが、面白くないので俺もついていくことにした。
藤木「なぁ、水、出しすぎじゃね?てか、寝てる人にこんなことしていいのか?」
須藤「分からん」
無責任な事を言いながら、まさはおっさんの頭に水を浴びせ続けた。
すると、うぅーんと唸り声が聞こえた。
藤木「あ、起きたんじゃね?」
須藤「ん」
おっさんの頭がもぞもぞと動き、ゆっくりと顔を上げた。
眼鏡をかけていて、物腰が柔らかそうな顔付きだった。
寝不足なのか、目の下に隈ができている。
?「あれ、何か凄くびしょ濡れだなぁ…川に逃げ込んだ記憶は無いんだけどなぁ…」
川に逃げ込むって何かおかしくね?
寝起きだから言い間違えたのかな。
おっさんがキョロキョロと辺りを見回して俺達に気づいた。
?「あ、君たちが介抱してくれたの?ありがとゴボボボ」
藤木「まさ、早くどけてやれ」
未だに水を浴びせ続けているまさを制した。
?「いやーありがとうね。8徹してたら流石に倒れちゃったよ」
藤木「それ、ヤバくないか?」
公園のベンチに座って、おっさんが奢ってくれた缶コーヒーを飲んだ。
まさはちゃっかりジュースを頼んでいた。
歩にあげるらしい。
?「俺の名前は靖雄って言うんだ。偽名だけどね」
藤木「偽名かよ」
?「君達は?」
藤木「俺は藤木 藤谷。こっちは須藤 正恒」
?「藤木君と須藤君ね、二人は学生?」
須藤「ん」
?「そっかぁ~俺が道端に倒れててビックリしたでしょ?」
藤木「あぁ、まぁ…」
?「帰る途中で力尽きちゃってねー介抱してくれたのは君達が初めてだよ」
藤木「よく警察沙汰にならなかったな…」
須藤「むしろ人に見つかっていないのが凄いと思う」
?「まぁ、あまり人に見つからないようにしてるからねー背後からスタンガン当てられたら危ないし」
さっきからこのおっさんは何を言っているんだろうか。
須藤「ところで…偽名で呼んだ方がいいですか?」
?「別に無理に呼ばなくていいよ、どうせ偽名なんだし。適当にあだ名つけてそれで呼んでくれても構わないよ」
須藤「あだ名…何がいい?」
藤木「うぇ?俺に聞くのかよ」
まさは名前をつけるのが苦手らしく、その辺ののら猫に名前をつける時も俺に相談してきた。
そののら猫は俺に全くなつかないで、まさにばかり甘えてた可愛くないやつだったけどな。
藤木「この際、やっさんでいいんじゃね?」
須藤「やっさん…」
?「お、何だかいいねー親近感がある」
須藤「じゃあ、やっさん」
やっさん「うん、改めてよろしくねー」
あだ名をつけられて喜んでるやっさんとまさは和気あいあいと話してた。
やっさん「んー…ん?あ、あー二人とも、久しぶりー」
須藤「やっさん、また徹夜ですか」
やっさん「そーそー今回は10徹」
須藤「いつか倒れますよ」
やっさん「もう倒れてるよー」
やっさんと会うたびに、俺は一年前の事を思い出す。
実は、「おっさん」と言おうとしたら靖雄とおっさんが混じって「やっさん」と言ってしまい、訂正する間もなく決まってしまったことに。
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