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想い (潤side)
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初めてちゃんと話した9月のあの日から3ヶ月。
振り返ればあっという間と言えるほど短かったが、少しずつでも確実に葵との距離を縮めることができていると思う。
それこそ初めは全然自分から話しかけてくれなかったし、表情も少なかった。
それが最近では普通に喋れるようになり、よく笑うようになった。
葵の笑顔を見るたびに、友達になれて良かったと感じる。
3ヶ月前の俺が築きたかった関係が、今叶ってるんだ。
それでも____
もっと葵に近づきたい。
友達以上の関係になりたい。
葵の"特別"になりたい。
欲は尽きず溢れ出す…
体育祭の時にポッと自覚した恋心は、時と共に収まるどころか大きくなり、俺の心を占めた。
男同士なんておかしい。
誰にも相談できないし、するつもりもない。
葵にもこの想いは打ち明けない。
もし告白したら、と冷静に考えても断られる未来しか予想できなかった。
玉砕して友達ですらいられなくなるくらいなら、この想いを胸にしまって今の関係を守っていきたい。
学校帰りに肉屋のコロッケを奢った。
たかだか80円のコロッケを、葵は美味しそうに、幸せそうに食べた。
不意に横に歩く葵の細い肩が目に入る。
前より少し痩せた気がした。
無理しているのだろうか…
朝も昼も俺の勉強に付き合わせて、迷惑だったかもしれない。
謝った方がいいかな…
迷惑かけてごめん。葵の時間を取ってごめん。いつも付き合わせてごめん。
…いや、俺だったら、謝られるよりも…
「ありがとな」
軽く言ったつもりだった。真面目にお礼を言うのは結構恥ずかしかったから、目を合わせずに。
いつもみたいに自然に返されると思った。
でも葵は心なしか照れたように顔を赤くして、
「お、お礼を言われるようなことは何も…!ぼ、僕も楽しかったし…」
手をブンブン横に振り、はにかみながら言った。
少し予想と違ったその反応に、クスと笑ってしまう。
『僕も楽しかった』
その言葉は予想以上に嬉しいものだった。
あの時間は楽しいものだったんだ。
楽しい時間をお互いに共有できたんだ。
葵にとって、俺は少しでも"特別"な人間になれたのかな。
そこまで深くて重い意味はないであろうたった一言に左右されて、単純かもしれない。自惚れかもしれない。
それでもそのたった一言でこんなに喜んでしまうくらい、俺は葵が好きなんだ。
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