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テスト初日
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一条はいつもにも増してしつこく責め、結局その日眠れたのは3時間足らずだった。
3日前から寝不足が続き、流石に頭の回転が遅くなっている気がするが、そんな事はテストができない言い訳にはならない。
パンッと頬を叩いて気合を入れる。
「あーおい!おはよ!」
昇降口前で後ろから健人に飛びつかれた。
「おはよう健人。調子どう?」
テスト当日にもなれば、何処もかしこもテストの話題で持ちきりだ。
僕も今日のテストのことを指してそう言うと、健人は親指を立てた。
「自信しかねーよ!テストが楽しみなくらいだ。葵のおかげだな。教えてくれてサンキュ!」
「役に立ててよかった」
「そういう葵はどうなんだ?顔色は…あんま良くないけど」
「そ、そうかな…でもここまで来たら全力出すしかないよ」
一条のことも母さんのことも、問題ばかりが重なって今の自分が大変なことは自覚している。
ここが踏ん張りどころだ。
強く、教室への1歩踏み込んだ。
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現代文、数1、化学の3教科のテストを終え、今ひとつ手応えの薄い感覚に溜息をついた。
それに対して潤は、今までにないような出来に感動している。
「葵!すげえよ、なんか問題見たら勝手に手が動いた!絶対過去最高点取れてる!」
「よかったね。でもまだ1日目だよ。一教科でも赤点取っちゃダメなら、ここで気を抜かないようにしなきゃ」
それは自分に対しても向けた言葉だった。
そう、まだ1日目なんだ。今日の結果が多少悪くても大丈夫なようにあと3日間も諦めずに頑張らないと。
「そうそう、なんかな、俺の母親に葵のこと話したら、勉強教えてもらったお礼に何かしたいから家に呼んでって。」
「ええ!?いいよ、お礼なんて!」
思いがけない言葉に手と首を横に振る。
お礼を言われるほど大したことはしていない。
それなのにあまり感謝されると、逆に肩身が狭くなりそうだ。
「まあまあ。母さん言い出したら聞かないし、家に人呼ぶの好きな人だからさ。
多分ちょっとお茶飲んだり飯食ったりするだけだろうし、悪いけど付き合ってくれ」
両手を合わせてそんなふうに頼まれれば断る術は無く。
「じゃあ……お邪魔します」
そう言って軽く頭を下げると、潤は心底嬉しそうに笑った。
「あ、テスト最終日の午後って空いてる!?」
「空いてるよ」
「よし、じゃあその日な!」
気乗りしないところもあるが、あまりに嬉しそうな潤に釣られ、僕も少し口角を上げた。
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